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特集 テーマ  上野原の市民は何を目指すべきか
 研究提案 その4 デマンドミニバス導入のための浄財を求める
  第24講 『BY THE PEOPLE, OF THE PEOPLE, FOR THE PEOPLE.』でデマンドミニバスを成功させよう
  第23講 『デマンドミニバス』の需要予測
  第22講 『デマンドミニバス』のビジネスモデル
  第21講 『交通大動脈』と『交通小動脈』のコンセプト
  第20講 『制度疲労』と上野原の公共交通



『デマンドミニバス導入のための浄財を求める』 その

第24講  『BY THE PEOPLE, OF THE PEOPLE, FOR THE PEOPLE.』で
  デマンドミニバスを成功させよう

 なぜ、今、デマンドミニバスなのか − これまでの論旨の確認  

@ 平成14年2月に道路運送法が改正され、平成16年1月に棡原地区の富士急バス日原路線が廃止されました。バス会社は(営業所管内全体が黒字であっても)当該路線が赤字であれば地域の交通会議で認められることを条件に赤字路線から撤退できることになりました。
A この法改正は、「このままでは『制度疲労』によって地域社会が崩壊する。まず今の仕組みを破壊して、新しい仕組みが生まれ出る切っ掛けを創る」という政府の構造改革の意図によるものと私は考えています。
B 私たち上野原市民は、お上(政府・地方自治体)のやることを批判するだけで、中山間地の地域社会の崩壊を座視するか、『デマンドミニバス』という新しい仕組みを導入して、少子化・高齢化から地域社会を守るために進んで立ち上るか、『上野原の市民の魂』が問われています。
C 上野原市は(コンサルタントに丸投げせずに)市民と市役所職員による検討委員会を立ち上げました。私は委員長を拝命し、デマンドミニバスのコンセプトを纏め、実現の可能性を確認しました。


 市の委員会で纏めたデマンドミニバスのコンセプト 

@ 昼間の赤字6路線のバスダイヤをすべて廃止する代わりに、『デマンドミニバス』を新設し、『現行バス路線から地区集落にまで入って集落と中心市街地を1日4往復、ドアtoドア輸送』する。
A デマンドミニバスは『乗客定員9人の乗り合い』とし、『遠隔地4地域に1台ずつ配車』する。
B 乗客は『事前に予約』し(空席がある場合は当日予約も可能)、『運賃は同一地域内で乗降する場合は一律200円、中心市街地までの運賃は中心市街地までの距離に応じて「300円」、「400円」、「500円」の3段階』とする。


 デマンドミニバスのコスト試算 

 デマンドミニバス『1台あたりの年間コストは800万円』です。このコストは『乾いた手拭を絞る』感覚で試算しています(委員会で見学した長野県富士見町ではコンピューター予約システムの導入に2000万円と年間保守経費100万円を負担していますが、上野原市では携帯電話と住宅地図とカーナビで連絡を取り合う仕組みを考えています)。


 デマンドミニバスの需要見通しと事業収支見込 

 デマンドミニバス導入予定4地域を対象に行なったアンケート調査に基づいて需要見通しを行なった結果

第1地域(西原・棡原)では      週日に82.8人、  週末に51.7人、
第2地域(甲東・大鶴)では      週日に90.7人、 週末に65.0人、
第3地域(大目・巌・コモア)では  週日に194.9人、 週末に145.0人、
第4地域(秋山・無生野)では 週日に128.7人、 週末に102.1
の乗客が見込まれています。
         
  『平均運賃を400円』と想定すると『1日当たり55人の乗客が乗車するとデマンドミニバスの収支は保てる』ことになります。
  
   (年間コスト800万円÷365日÷400円/人=54.8人/日)

  今年のカレンダーでは週日が248日、週末(祝日を含む)が117日ですが、第1地域の週末の51.7人以外はすべて55人を上回っていますので、
 4往復のすべての座席が予約で満員(乗車率100%)、すなわち、1日当たり72人(18人×4往復)の乗客が見込まれ、『年間運賃収入が1051万円(72×400×365)、250万円の利益』が期待できます。第3地域では初年度から1台では不足する可能性さえ読み取れます。

 以上が小委員会で検討してきたデマンドミニバスのコンセプトとそれを形にしたプロトタイプおよびアンケートに基づく需要見通しと事業収支見込です。


 デマンドミニバス実行計画案における3つの課題 

  
ここからさらに検討を進めて、『実行計画を作成』しなければなりません。予約の受け付け・連絡の方法・走行道路などの詳細は事業会社の検討に俟つことにして、小委員会では、

 
@ 『車輌の調達と2種運転免許を持つドライバーの確保』、
 A 『安全運転確保のために設けられている国の許認可の取得』、
 B 『1車輌当たり800万円の資金の確保』という3つの課題があると考えてきました。


 第1の課題について『上野原市のタクシー会社5社が1両ずつ車輌と運転手を確保し、デマンドミニバスの運行を受託する』という実行案が提示され、この案を基に検討しています。(このシリーズ第22稿の『デマンドミニバスのコスト試算』では、便宜上、都会にだけ認められ、中山間地では認められない個人タクシー態様のデマンドミニバスを仮設例として想定しました。この場合、運転手が有給休暇をとられる場合、個人タクシーの形態なら運休という事態を避けられませんが、『上野原市のタクシー会社5社が1両ずつ車輌と運転手を確保し、デマンドミニバスの運行を受託する』という形態の場合はタクシー会社の中でやりくりが出来ますので、運休という事態は起こらないと考えています)。

 私は道路状況を知り尽くしていることが安全運転の根本と考えていますので、上野原の道路を知り尽くした地元のタクシー運転手がデマンドミニバスを運転される仕組みによって安全運転確保の目途が与えられたことを心強く思っています。

 第2の課題は安全運転を確保するための法律の仕組みをどのようにクリアーするかということです。
現在の法と規則では「許認可は、デマンドミニバスの運行を委託する第3セクターだけでなく、デマンドミニバスの運行を受託するタクシー会社5社においても、デマンドミニバスを既存のタクシー事業とは別の新事業と見立てて、運転管理者や車庫などを整備し、運輸局の許認可を受けなければならない」とされています。

 私はこの点について「行政が参加する第3セクターがデマンドミニバスの運行管理に全責任を持つことを条件に、デマンドミニバスの運行を受託するタクシー会社5社の許可取得を免除願う」という構造改革特区を申請し、安全運転確保の法律の要件を満たさなければならないと考えています(タクシー会社が1両のデマンドミニバスのために運転管理者や車庫を新に設けることは採算上実現不可能です)。

 タクシーとして使用されているセダンタイプの車輌がそのままデマンドミニバスに転用されることを認めることは出来ないというのが法律の立場ですが、「上野原の中山間地の昼間の市民、とくに自家用車の便を持たない高齢者のための乗客定員9人のワンボックスタイプの乗用車をタクシー会社が新規に調達して、専らデマンドミニバスとして利用する場合は、特区として認められる可能性が十分にある」、否、『この特区なくして上野原の中山間地の崩壊を食い止める公共交通機関の新設はありえないという上野原の背水の陣を福田背水の陣内閣に特区提案して、何としても実現しなければならない』と私は考えています。

 
第3の課題は1車輌800万円の資金の調達です。資金の調達の方法は
 
@  上野原市による100%出資、 A 100%個人・法人による出資、 B 100%銀行借り入れ
 という3つの選択肢とその組み合わせが考えられますが、
 私は『UBC方式のように個人・法人による出資に加えて上野原市が出資する第3セクター方式で運営し、市がリスクを背負わない事業形態が望ましい』と考えています。


 デマンドミニバス導入のための浄財を求める 

 『BY THE PEOPLE, OF THE PEOPLE, FOR THE PEOPLE.』。これは民主主義について語った アブラハム リンカーン の有名な言葉ですが、私は『上野原市の生活の根本に関わるデマンドミニバスの創設を、上野原市民のために、上野原市の市民が力を出し合って解決して行く』ことを合言葉にして、お祭りにご祝儀を出す感覚で、例え1世帯当たり5000円でもよい、主旨に賛同して地域のために尽くそうとお考えの方々には10万円あるいは100万円を拠出(投資)して頂くなど、すべての市民が上野原市の中山間地の社会を崩壊から守るための『この指とまれ方式の事業資金集めの活動』に参加して下さることを呼びかけます(私は少なくとも5%の配当、うまく行けば10%の配当が可能ではないかという夢を描いています)。

 また、この事業によりリターンが期待できる市民出資による『上野原市方式の街づくり』の基本モデルが完成し、次の事業の立ち上がりが容易になり、街づくりの良好な連鎖環境が出来上がると確信しています。

 とくに私は『普通の人=自然人』だけでなく『法律上の人=法人』にも呼びかけ、上野原で事業をされている会社の社長さまや金融機関の方々に第3セクターへの出資をお願いいたしたいと考えます。

 受け入れて頂けるかどうか定かでありませんが、商業・工業・サービス業など上野原の会社の中核組織である上野原市商工会がデマンドミニバスの第3セクターの立ち上げとその後のサポートに中心的役割を果たして下さることをお願いしたいと考えています。

 第3セクターに1人でも多くの方が出資され、『デマンドミニバスという神輿を生み出してみんなで担ぐ』ことを私は切望します。その中で、街中が楽しくなるようなデマンドミニバスの愛称を公募することもよいことでしょう。デマンドミニバスの車体に広告を出してもらうことも考えに入れてよいことでしょう。デマンドミニバスが迎えに来るとその昔郵便馬車が奏でたようなホルンのメロディーが聞こえるようにすることもよいでしょう。必要なことは人々の前向きの意思がデマンドミニバスという形で具体化すること、その中から中山間地の生活基盤が崩壊を免れること、そして、少子化・高齢化によって崩壊しつつある中山間地に再生への確かな歩みが生まれることです。


 この提案の結び 

 委員会では長野県富士見町のデマンド交通の事例を見学しました。その際、デマンドミニバスで町に出て来たお年寄りには住所と電話番号を記入した名札を付けてもらって、商店街の人々がデマンドミニバスのオペレーターへの電話連絡を代行して上げる活動が自然発生的にはじまり、街中で助け合いの輪が広がっているという話を聞きました。

 
上野原市の光ファイバーネットワークが完成した時に、デマンドミニバスの予約状況が情報ターミナル(告知端末)や放送によって各家庭に伝えられたり、無料のIP電話で街に出たお年寄りへの手助けが気軽に出来るようになったり、上野原市の助け合いの絆が一段と強化されることは間違いありません。

 
10月1日にいよいよ郵政民営化がはじまりました。上野原市では9月の議会で来年4月から西原中学校と棡原中学校が上野原中学校に統合されることが決まりました。私はどんなに財政が豊かな自治体でも、生徒の数と先生の数が同じという小学校や中学校を過疎地域で維持することは出来ないと思っています。
 今回の中学校の統合は冒頭に述べた『制度疲労』への現実的対応の一環であります。この統合が実現した後に、西原・棡原地域からJR上野原駅まで朝夕に運行されるバス路線が『西原⇔棡原⇔上野原中学校⇔市立病院⇔日大明誠高校⇔上野原駅』の順に走行することが時代の要請となって来るのは明らかです。
 上野原市は構造改革のための破壊と創造の活動が着実に進められています。その中から上野原市の住み良い街づくりと商工業振興の芽が生まれて来ています。

 
福田総理の施政方針演説に『地方再生への構造改革』という言葉がしっかりと語られたことを忘れることなく、委員会では構造改革特区提案を含めて引き続きプロトタイプを基に実行計画案作りに着手していきます。このデマンドミニバスの論考をご覧いただいたみなさま方からの建設的なご意見・ご提案を市役所総務課あてに頂きたいと思っています。(完)TN


2007−10−07  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗



『デマンドミニバス導入のための浄財を求める』 その4

第23講   『デマンドミニバス』の需要予測

 アンケート集計結果から需要見通しへの展開−その1 『アンケート配布集団と母集団の関係』 

 アンケートから需要見通しへ展開するに当たってまず確認しなければならないことは『コンピューターを用いて無作為抽出した配布集団が母集団の正確な縮図になっているかどうか』ということです。第1地域(西原・棡原)地区について実際の人口統計とコンピューターが無作為に選び出したアンケート配布集団の関係を比べると次の通りです。

第1地域(西原・棡原) 年齢区分 16-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-74 75〜
人 口  1277人 内訳 66 132 132 153 246 292 256
構成比 100.0 5.2 10.3 10.3 12.0 19.3 22.9 20.0
アンケート配布数 199 内訳 13 21 20 23 38 45 39
構成比 100.0 6.5 10.6 10.1 11.6 19.1 22.6 19.6

  この地域の人口1277人からコンピューターは選り好みせずに199人を選び出しましたが、この表の通りその年齢別構成比は見事な縮図になっていました。

  『デマンドミニバスのお客さんは昼間家にいる年配の市民』と想定されますが、『コンピューターが選び出した人々がお年寄りばかり』だったらみなさんはどう思われるでしょうか。『デマンドミニバスを導入したいという下心』があって、『気心を加えて』作為的にお年寄りばかりをアンケート回答者に選び出したと言われるでしょう。逆に、『コンピューターが選び出した人々が若い人達ばかり』だったら、みなさんはどう思われるでしょうか。デマンドミニバス導入を葬り去る政治的意図を持って作為的にアンケート回答者を選び出したと言われるでしょう。

  みなさんはこの表の数字をどのように評価されますか。

選ばれた人が199人 ですから、1人をどこかに動かすと構成比が0.5%出入りしますから構成比は1パーセンテージポイント変化します。
今回、私は『乱数表を用いたコンピューターによる無作為抽出』の威力を改めて確認しました。『作為・恣意・情実をはねつけることは需要予測の信頼性の原点』であります。


 アンケート集計結果から需要見通しへの展開−その2 『アンケート配布集団と回答集団の関係』
 
 みなさんは内閣支持率の世論調査の対象は何人で、およそ何人が回答していると思われるでしょうか。答えは『対象は2000、回答率67%』が平均像です。たった2000のサンプル調査で重要な全国調査が出来るのか疑問だと思われるでしょうが、この点は数理統計学が『信用してよい』という結論を出しています。

 私たちの場合、配布数2000としましたが、有効回収数は847通(有効回収率42.4%)で、回答率が半分を下回りました。統計の専門家からは回答サンプルが少なすぎると疑義が出される可能性がありますが、このデータで分析を進めます(疑義が出されれば、確からしさのレベルを下げればよいでしょう)。第1地域(西原・棡原)のアンケート調査の配布集団と回答集団の関係は次の通りです。

第1地域(西原・棡原) 年齢区分 16-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-74 75〜
アンケート配布数 199 内訳 13 21 20 23 38 45 39
構成比 100.0 6.5 10.6 10.1 11.6 19.1 22.6 19.6
アンケート回答数 91人 内訳 3 9 6 10 17 25 21
回答率45.7% 23.1. 42.9 30.0 43.5 44.7 55.6 53.6

 このデータの大事なところは若い人よりお年寄りの回答率が高くなっていることです。このことはデマンドミニバスへの関心が明らかに高齢者で高いことを示していると考えられます。

 私は『アンケート集計結果を需要見通しへ展開する』に当たり、『年齢別回答率がその年齢層の人々のデマンドミニバスへの需要の大きさを表わしている』と考え、『年齢別人口に年齢階層別回答率を掛け合わせて年齢別需要見通しの基礎データとする』ことにいたしました(私は年齢別回答率の傾向線を計算して傾向線上のデータを年齢階層別回答率とせずに、アンケートに現れた生のままの回答率を需要見通しに利用する方針を採用しました。人口のデータについては15〜19才、アンケート回答データは16〜19才で1歳分だけ不突合がありますが、大勢に影響がないと判断してこれも補正せずにそのまま使用しています)。


 需要見通し − その1 『地域別・年齢階層別の1日当たり外出者数の想定

 需要見通しの第1歩は、第1地域(西原・棡原)でアンケートを配布された199名のうち回答された91名が『問6(平日にはどれくらいの割合で外出するか)』にどのように回答されたかということであります。まず回答内容を見ましょう。

第1地域(西原・棡原) 平日の外出頻度 毎日 週3 週1 月2 月1 ゼロ 無回答
アンケート回答数 91人 44 13 16.5 6.0 3.5 5.0. 3.0
平日の外出係数 1.0 0.6 0.2 0.09 0.04 0.0 0.0

 『アンケート集計結果を需要見通しへ展開する』に当たり、私は『外出係数』という工夫を取り入れることにしました。『ウイークデーの5日間、毎日出かけると答えた44人は外出係数が1.0、したがって91人のうち44人(44×1.0)は毎日外出している』と読み取るわけです。『週日5日のうち3日出かけると答えた13人は外出係数は0.6、したがって91人のうち7.8人(13×0.6)は毎日外出している』と読み取ります。このような作業を続けると、『平日に第1地域(西原・棡原)でアンケートに回答された91名のうち55.8名は毎日外出されている』と読み取れるということであります。

 
91名と55.8名という2つの数字は第1地域(西原・棡原)の人々の外出行動パターンの基礎データを示します。すなわち『55.8÷91=0.613=1人・1日あたり外出数(外出頻度)』ということであります。

 この数字を用いて、

  
第1地域(西原・棡原)人口1277]×[アンケート回答率0.457]×[外出頻度0.613]

  を計算すると=359.8 という数字が得られます。

 
この数字は第1地域(西原・棡原)では1277人中360人(28.2%)が「何らかの交通手段」で、「何らかの目的」のために毎日外出していることを示しています。このデータが需要見通しの出発点となります。


 需要見通し − その2『地域別・年齢階層別の交通手段と外出目的の想定』  
 
 この算式において「年齢階層別人口×年齢階層別回答率」は「地域の人々がアンケートを配布された人と同じ回答を寄せたと想定した場合の地域の人々全体の外出数」であります。この外出数には徒歩も含まれ、『外出の際の利用交通機関』および『外出目的』については何も示されてはおりません。この2点を明らかにしない限り『デマンドミニバスの需要見通し』に進むことが出来ません。そこで私は『アンケート集計結果を需要見通しへ展開する』ための第3の工夫として、『対象年齢・交通手段係数』および『対象年齢・外出目的係数』という2つの係数を工夫しました。

 『対象年齢・交通手段係数』は、アンケート「問9:外出する時の市内での主な交通手段」に関する質問の中で『自家用車便乗・路線バス・タクシーと回答した人達の構成比を合計した値』であります。

第1地域(西原・棡原) 平日 16-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-74 75〜
 徒歩・自転車 0.00 0.11 0.00 10.00 0.00 2.00 2.40
 バイク 33.30 0.11 0.00 0.00 5.90 0.00 7.10
 自家用車 0.00 77.80 83.30 80.00 82.40 56.00 16.70
 自家用車便乗 66.70 0.00 16.70 0.00 0.00 14.00 19.00
 路線バス 0.00 0.00 0.00 10.00 11.80 28.00 40.50
 電車 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
 タクシー 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
 その他 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 4.80
 無回答 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 2.00 2.00
 交通手段係数% 66.70 0.00 16.70 10.00 11.80 42.00 59.50

 『自家用車便乗・路線バス・タクシーと回答した人達はデマンドミニバスを利用する可能性がある』という考え方であります。

 これに対して「対象年齢・外出目的係数」は「問8:外出する目的は何ですか。2つまでお答え下さい」という質問の中で「通院・買い物・公共施設利用・銀行などの利用・趣味娯楽と回答した人達の構成比の合計」であります。

第1地域(西原・棡原) 平日 16-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-74 75〜
 通勤 0.00 50.00 42.90 51.70 37.20 13.30 0.00
 通学 66.70 16.70 0.00 0.00 3.70 0.00 0.00
 通院 0.00 0.00 0.00 0.00 9.70 26.70 47.30
 業務 0.00 0.00 28.60 7.10 7.40 4.40 0.00
 買い物 0.00 33.30 0.00 14.30 20.80 37.80 28.00
 公共施設利用 0.00 0.00 0.00 0.00 3.70 0.00 0.00
 銀行郵便局利用 0.00 0.00 14.30 0.00 13.80 6.70 11.90
 趣味娯楽 33.30 0.00 14.30 7.10 0.00 11.10 0.00
 その他 0.00 0.00 0.00 14.30 3.70 0.00 9.60
 無回答 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
 外出目的係数% 33.30 33.30 28.60 21.40 48.00 82.30 87.20

 『通院・買い物・公共施設利用・銀行などの利用・趣味娯楽を目的として外出されている人々はデマンドミニバスを利用する可能性がある』という考え方であります。

 毎日360人が第1地域(西原・棡原)で『何らかの交通手段』で、『何らかの目的』のために外出しているというデータにこの『対象年齢・交通手段係数』および『対象年齢・外出目的係数』を掛け合わせることによって、デマンドミニバスの需要見通しデータが完成します。こうして第1地域(西原・棡原)において何人がデマンドミニバスの乗客になり得るかを年齢別に捉えることが出来るわけであります。


 『地域別・週日・週末別デマンドミニバス需要見通し』 

 あとは『ああー草臥れたという言葉を知らないコンピューター』に

   『地域別・年齢階層別人口』×『地域別・年齢階層別アンケート配布数』
  
    ×『地域別・年齢階層別回答率』×『地域別・年齢階層別外出頻度』

     ×『地域別・年齢階層別交通手段係数』×『地域別・年齢階層別外出目的係数』 

 を計算してもらえばよいわけです。
 そこから予定されている4台のデマンドミニバスの需要見通しデータが出てきます。

 コンピューターから現れた
『デマンドミニバスの1日当たり乗客見込み数』は次表の通りです。

1日当たりデマンドミニバス需要
15歳以上人口 配布数 回収数 週日利用数 週末利用数
第1地域(西原・棡原) 2177 365 163 82.8 51.7
第2地域(甲東・大鶴) 1089 361 158 90.7 65.0
第3地域(大目・巌・コモア) 1070 764 321 194.9 145.0
第4地域(秋山・無生野) 2209 508 200 128.7 102.1

 デマンドミニバス4往復のすべての座席が予約で満員(乗車率100%)の場合、1日の最大乗客数は18人×4往復=72人ですから、コンピューターから現れた需要見通しはウイークデーについては4地域とも最大乗客数を越えています。

 全便満席の場合、年間運賃収入1050万円、コストは800万円ですから、250万円の利益が見込まれるというのが需要見通しに基づく収支見通しの結論であります。

 第3地域はスタート週日・週末ともに、当初から2台でも全便満席という見通しをコンピューターは打ち出しています。

 第1地域のウイークエンドのデータである51.7は乗車率71.8%(51.7÷72)で、収支トントンが実現可能な水準であります。第2のウイークエンドのデータは65.0で、収支トントン、第3地域のウイークエンドのデータは145.0で、第4地域は102.1でウイークエンドでも満席が起こり得ることを示しています。


 2組の夫婦はこのデータを見てデマンドミニバス事業を興すことを決断しました。TN


2007−09−30  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗



『デマンドミニバス導入のための浄財を求める』 その3

第22講   『デマンドミニバス』のビジネスモデル


 経済活動で一番大切なことは『お金の循環』   

 タクシーの運転手を定年退職して年金生活をしている2組の夫婦が協力して800万円の宝くじの賞金を引き当てました。これを2組の夫婦で山分けしてしまえば1組当たり400万円を受け取れますが、夫婦2人の毎月の生活費に16.5万円を上乗せすると、2年間は豊かな生活ができても、それ以降はもとの年金生活に戻ってしまいます。山分けは『一時の豊かさ』を生み出しますが、その豊かさは長続きはしません。
 しかし、この800万円を元手にして2組の夫婦が相談して『個人タクシーの感覚』で『デマンドミニバス事業を創業』する場合、どのようなことが起こるでしょうか。


 私たちの生活の質(クォリティーオブライフ)を向上させて行く上で何よりも大切なことは、お金を山分けするのではなく、お金を循環させる企業という仕組みを立ち上げて苦労を重ねながら事業を続けると、3年経っても、5年経っても毎月16.5万円を上乗せした豊かな生活が出来るようになるのです。『お金の循環』とはこのことを言っています。

 このような観点から上野原市交通問題検討委員会小委員会で議論したデータを若干修正して『デマンドミニバス』のビジネスモデル(収支計算)を『物語り風』に描いて見ましょう。


 『デマンドミニバス』事業の創業ものがたり   

@ 車輌代金:
まず必要とされるのはハイエースタイプのディーゼルエンジンのワンボックス乗用車です。新車は綺麗で、いろいろ新しい機能がついているけれども、初期のオイル交換の費用などが嵩むことを考慮して、2組の夫婦はナビゲーションシステムがついていることを条件に、向う7年間に50万キロ走行可能で、新車の綺麗さが残っている中古車を買うことにしました。
代金は450万円でした。その結果、使えるお金は800万円から350万円に減りました。
A 保険料:
保険はしっかりと掛けなければなりません。自賠責に年間10万円、任意保険に年間29万円、合計
年間39万円を支払います(対人・対物無制限、搭乗者1000万円を付保)。
B 燃料費とオイル代金:
1日の走行距離を200キロ(西原や秋山無生野からJR上野原駅までの路線バスの走行距離は片道約20キロですからデマンドミニバスは1日4往復出来ます)、走行燃費が1リットル当たり6キロ、軽油代金が1リットル当たり106円、3000キロ走行ごとに1リットル900円のオイル交換を行うと
年間141万円見当の軽油とオイル代金が必要です(昨今、軽油代金は120円に上昇しています)。
C 修繕費:
車検・3ヵ月点検・タイヤ代・一般修理などに
年間26万円見当が必要と見込まれます。
D 社会保険料:健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険などの『社会保険料の会社負担分』として年間54万円見当必要です(社会保険料は給料を受け取った個人も同額を支払います)。
E 一般管理費:
事務所家賃・電気ガス水道代金・携帯電話代・文房具代・決算業務代行料金などの一般管理費として月額6.1万円、
年間73万円見当が必要です。

 コストの計算   

 ここに記したAの保険料からEの一般管理費までの合計金額は『デマンドミニバス事業をはじめる以上、後戻りできない形で1年間に会社から出て行くお金』で、その合計は333万円であります。

 この他に車の償却費と自分たちの給料を計算に入れなければなりません。

 車輌は7年間使用(中古車でさらに51.1万キロを走行)するとして、450万円を7年で定額減価償却すると、減価償却費は毎年64万円(450÷7)と計算されます(『減価償却費』とは「7年後に車を買い換えるだけの資金を毎年64万円ずつコストとして売上から差し引いて手元に積み立てておく資金」と考えて下さい)。

 給料は、1組の夫婦当たり月16.7万円、2組の夫婦が受取る給料は合計月33.5万円、
年間401.5万円と計算されます。その計算基礎は、ご主人と奥さんのペアの時給が1350円で、1日8時間を4時間ずつ交代で、ご主人が車の運転を、奥さんが予約電話の応対と運転中のご主人へ連絡するという想定です。

 後戻りできない形で1年間に会社から出て行くお金333万円に減価償却費64万円と2組の夫婦に支払う年間給与401.5万円を合計すると1年間に必要とされるコストの
合計は798.5万円となります。

 資金繰り=キャッシュフローの計算   

 800万円の元手で『デマンドミニバス事業をはじめて、1年間のコストが798.5万円で、何とか事業は成り立つ』と思って事業をはじめてよいものでしょうか。答えは『ノー』です。手元に現金がなくなり、資金繰りに行き詰って、折角の計画が破産して人々の期待を裏切ることになる可能性(リスク)があるからです(銀行からは借り入れ出来ないと想定しています)。

 資金繰り(=金庫の中の現金残高)を計算してみましょう。車輌代金を支払った時点で金庫の中の現金は350万円です。1年間に社外に支払われるお金の合計は333万円ですが、月額はその12分の1の27.8万円ですから、給料は(減価償却をしない場合)350−(27.8+33.5)×nヵ月=0 からn=5.7、すなわち、
はじめの5ヵ月間は元手の800万円から給料を受取ることが可能です。しかし、それ以降は減価償却の64万円と7ヵ月分の給料の合計298.5万円を支払うだけの資金繰りをつけなければなりません。資金繰りがつかなければ会社は倒産し、世間の期待に応えられません。「さあどうするか」が問題です。


 需要見通しと収支計算   

 2組の夫婦は資金繰りの目途を得るために『需要見通し』に取り掛かりました。

 デマンドミニバスの乗客定員は9人です。平均運賃を400円として、西原・棡原など4地域と中心市街地間(バス路線で片道20キロ)をバス路線から集落に入って乗客を乗降させながら1日4往復する場合の売上金額を計算することにしました(1日当たり200キロ走行は5往復分に相当します)。

 4往復のすべての座席が予約で満員(乗車率100%)の場合、1日の売上は

   18人×4往復×400円=28800円(年間1051.2万円)

    が見込まれます。乗車率が50%の場合は売上は半分の年間525.6万円となってしまいます。どの便も乗車率75%、すなわち、乗客が6〜7人乗っている状態が実現すれば、年間売り上げは788.4万円見当となり、大きな利益は見込めないものの、収支はほぼトントンで事業が継続され、3年経っても、5年経っても毎月16.7万円を生活費に上乗せ出来ることになります。 

 問題は本当に乗車率75%が実現するかどうかです。乗車率が50%あるいはそれ以下になれば、汗をかいて働いた上に、折角引き当てた宝くじの賞金が失われることになりかねません。2組の夫婦はもっと確かなデータに基づいてデマンドミニバス事業を興すか否かを決断したいと考えるようになりました。そのためにはアンケート調査が必要です。

 アンケート調査   

 上野原市交通問題検討委員会小委員会では平成19年3月に『デマンドミニバスの需要調査のためのアンケート調査』を次の要領で実施しました。
@ 実施地区:大目・甲東・巌・大鶴・島田・棡原・西原・秋山
A 対象者:実施地区の16歳以上の市民2000人を住民基本台帳から無作為に選出
B 方法:郵送による配布と回収
C 有効回収数:847通(有効回収率42.4%)
D 調査項目:◎は週日と週末について別々に質問
○居住地域○性別○年齢○職業○自宅⇔バス停の所要時間
◎外出頻度◎外出範囲◎外出目的◎外出時交通手段◎外出時間帯◎帰宅時間帯◎帰宅時交通手段
◎新交通手段の利用時間◎新交通手段の運賃
E 一般管理費:
事務所家賃・電気ガス水道代金・携帯電話代・文房具代・決算業務代行料金などの一般管理費として月額6.1万円、年間73万円見当が必要です。

 集計結果   

 回答者の年齢:「60〜74歳」が31.1%で最も多く、次いで「50〜59歳」が20.3%、「75歳以上」が17.0%、「40〜49歳」が12.6%の順で、それ以外の年齢は10.0%以下で、40歳以上の回答者が約8割を占めました。年齢が高まるほどデマンドミニバスへの関心度が高いことが浮き彫りになりました。
 以下、週日と週末についてのアンケートの回答結果です。

外出頻度 [週日]: 「毎日」が47.9%、「週3回程度」が17.4%、「週1回程度」が15.3%。
       [週末]: [週末]:「毎土・日」が20.6%、「いずれか1回」が30.8%、「月3回程度」が12.4%、「月2〜1回程度」が20.2%、「ほとんど外出しない」が12.2%の順。
外出範囲 [週日]: 「上野原中心市街」が41.8%、「上野原市外」が41.4%、「お住まいの地区内」が9.7%、「隣の地区」が5.3%。乗客の90%が中心市街地まで乗車する可能性があることが分りました。
[週末]: 「上野原市外」が52.9%、「上野原中心市街」が29.7%、「お住まいの地区内」が6.8%、「隣の地区」が4.0%。
外出目的 [週日]: 「通勤・通学」が27.0%、「買い物」が29.1%、「通院」が17.9%、「銀行・郵便局」が8.4%、「趣味・娯楽」が8.2%の順で、乗客の70%近くが通勤・通学の後の生活時間帯に乗車する可能性があることが分りました。
[週末]: 「買い物」が43.9%、「趣味、娯楽」が20.1%、「通院」が10.0%。「通勤・通学」が週末でも8.1%ありました。
外出する際の市内での主な交通手段 [週日]:
[週末]:
「自家用車」が54.7%、「路線バス」が12.9%、「自家用車に乗せてもらう」が12.5%。
「自家用車」が54.6%、「自家用車に乗せてもらう」が13.5%、「路線バス」が10.9%。
バス停までの交通手段 [週日]:
[週末]:
「徒歩」が81.6%。
「徒歩」が76.3%。
外出する時間帯 [週日]:
[週末]:
「8〜10時」が33.7%、「6〜8時」が28.4%、「10〜12時」が19.2%の順。
「8〜10時」が35.9%、「10〜12時」が29.1%。
帰宅する時間帯 [週日]: 「16〜18時」が22.0%、「18〜20時」が20.2%、「14〜16時」が17.2%、「12〜14時」が15.1%、「20〜22時」が11.2%。
[週末]: 16〜18時」が25.2%、「18〜20時」が18.5%、「14〜16時」が17.2%、「12〜14時」が13.3%。

 このアンケート実施に当たり、配布先の決定・質問項目作成・印刷・郵送・回収・データ集計のすべての過程を市役所の総務課のみなさんが行われました。ここから需要見通しを行うにはどうすればよいのでしょうか。TN


2007−09−23  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗




『デマンドミニバス導入のための浄財を求める』 その2

第21講   『交通大動脈』と『交通小動脈』のコンセプト


 『交通大動脈』・『交通小動脈』

 未だこの世に姿・形を現していないものごとについて説明する時に誰もが知っているものごとに喩えることがよく行われます。上野原市で赤字が続いている公共交通体系の再構築を考察するに当たって、私は『血管に喩えると分りやすい』と考え、小委員会で『交通大動脈』と『交通小動脈』というコンセプトを提案しました。交通システムと血液の循環システムはいずれも『流れを司る』点で共通しているからです。

 私が『交通大動脈』という比喩で表現しようとしたのは、『@ 上野原市全体の朝・夕の通勤・通学とA人口が集中している中心市街地における昼間の生活時間帯における大量輸送手段』であり、『交通小動脈』という比喩で表現しようとしたのは『人口が少ない中山間地における昼間の生活時間帯における小回りの効く便利な輸送手段』であります。


 『交通大動脈』・『交通小動脈』と『業態』


 世の中には『業態』という言葉があります。『業態』とは、簡単に言えば、『薄利多売を旨とするスーパー』と『定価を守って少量販売に徹するコンビニ』の違いと考えると分りやすいと思います。全く相異なる原理・原則に立脚している両者を混同すると原理・原則が見失われて、全体の機能が麻痺してしまいます。公共交通についても同様です。「大量輸送が必要な交通大動脈と大量輸送を必要としない交通小動脈は業態が違う。大動脈は路線バスに依存しなければならないが小動脈は路線バス以外の交通輸送が必要である」と考えた次第です。

 上野原市交通問題検討委員会では赤字バス路線地域で今年3月に『デマンド乗り合いタクシー』についてのアンケート調査を行いました(委員会ではアンケート実施時点までは新しい交通手段を『デマンド乗り合いタクシー』と表現してきましたが、タクシーと混同されやすいので『デマンドミニバス』という表現に統一しました)。アンケートに回答された市民のみなさんは上野原市の交通問題検討委員会でこのような検討が行われていることをご承知と思いますが、上野原市の公共交通のあり方を検討する場合に『業態』という考え方に立って『小動脈としてのデマンドミニバスが上野原市の赤字バス路線地域で経済的に成り立つかどうか』を調査しなければならなかったのです。


 『デマンドミニバス』のイメージ


 『デマンドミニバス』の実行案はさらに検討を加えて作成される手筈になっていますが、小委員会で取りまとめている『デマンドミニバス』のコンセプトレベルのイメージは現時点で次の通りです。

@ 運行態様
『乗客定員9人のワンボックスタイプの乗用車』、
『黒字バス3路線を徒歩で利用できない地域』、
『昼間の生活時間帯』、
『事前に連絡を受けた乗客』(空席がある場合は当日予約も可能)、
『バス路線からタクシーが走る道路で地区集落にまで入り込む』、
『乗車区間は乗車地区から中心市街地の降車地点まで』、
『輸送態様はドアtoドア輸送』
A 運行時間・運行本数
『デマンドミニバス』は9:00始発〜18:59終着の時間に1日 4〜5往復運転されます。
配車地域
『デマンドミニバス』は次の遠隔地4地域に1台ずつ配車予定です。
 第1地域(路線バス西原・棡原線):西原・棡原・小倉・向風・奈須部、
 第2地域(路線バス不老下線):棚頭・野田尻・桑久保・和見・芦垣・大曽根・大椚・鶴川・八米、
 第3地域(路線バス犬目・大田上線):犬目・大野・大田・四方津・川合・久保・松留・八ツ沢、
 第4地域(路線バス秋山線):秋山・田野入・鶴島・諏訪
C 運賃
同一地域内で乗降する場合は一律200円、中心市街地までの運賃は中心市街地までの距離に応じて「+100」、「+200」、「+300」の3段階を予定しています。

 『デマンドミニバス』のメリットは、お年寄りが多い地域で、お住まいの地区からバス停までの坂道を往復しなくてもよくなることです。介護が必要な方は介助者と同乗して頂くこと予定です(介護タクシーとは役割分担して棲み分けなければならないからです)。


 デマンドミニバスの乗降ルール


@ 利用希望者は、乗車前日までに電話で乗車の日時・乗降場所を予約します(当日の予約は空き席がある場合に受付けます。当初は、予約の順番を確定するために電話でのみ予約受付の予定です)。
A デマンドミニバスは 『時間にゆとりを持たせたダイヤ』に従って、お住まいの地域で乗車頂き、同じ地域では任意の場所で、中心市街地では一般通行車輌の妨げにならないよな場所で降車します(お急ぎの場合はタクシーあるいは自家用車を利用して頂きます)。 
B 中心市街地では、『インターチェンジ周辺〜新田郵便局の間の県道』および『上野原駅入り口の信号から駅の北口までの区間』では降車は不可能にする考えですが、それ以外は任意の地点で降車可能としてよいと考えています。
C 中心市街地での乗車も一般車両の妨げにならないような配慮が必要です。現在にところ、乗車できるのは、新井バス停・公正屋・JA北都留支店・市役所・旧上野原中学跡地・市立図書館・山梨中銀・市立病院・都留信・山梨信金上野原支店・本一パーキング・商工会第1駐車場・上野原郵便局本局・ダイエー・オギノ・島田郵便局・上野原スポーツプラザ・ヤマト運輸・上新田入口・山梨信金新田支店などを考えています。
D JR上野原駅への往路は中心市街地でデマンドミニバスからバスに乗り継いで頂きます。帰路は駅から中心市街地の乗車地点までバス路線を利用し、そこからからデマンドミニバスに乗り継いで頂きます。
E JR上野原駅で乗降できないことは、ほとんどの方が「不便だ」と思われるでしょうが、デマンドミニバスが路線バスの乗客を奪い、結果としてバスの赤字補助がつづくことを避け、『バスの赤字に対する補助金の削減』という本件検討の根本目的達成のために乗客のみなさまにも『がまん』をお願いしなければならないと考えています。


 デマンドミニバス導入を可能にした要因の評価


 私はデマンドミニバスの導入によって上野原市は住みやすくなると確信していますが、導入に向けて越えなければならなかった最大のハードルは、通勤時間帯以外の昼間の赤字6路線のダイヤが『創造につながる形で破壊することは可能か』ということでした。検討の結果、昼間の赤字6路線で運行されているバスが廃車されることなく黒字路線で運行される目途が与えられました。本当にすばらしいことと思います。

 何故か。その理由は大学の誘致によって『駅⇔帝京科学大学という黒字バス路線』が、国道20号線から日大明誠高校までの道路拡によって『駅⇔日大明誠高校という黒字バス路線』が誕生していたからです。私はデマンドミニバスが実現して上野原市が住みよい街になった時に、大学誘致と道路拡幅に努力された関係者、とくに、道路拡幅を着想した人物の頭脳と道路拡幅のために土地を割愛された地元の方々に対する感謝の気持ちを忘れてはならないと考えます。

 デマンドミニバスの予約は現在のところは電話で行うことを想定していますが、市の光ファイバー事業が完成した暁には、予約は電話・ファックスのほかメールでも受付けることが出来るようになります。それだけにとどまらずに、今、デマンドミニバスがどこを何人の乗客を乗せて走っているかを自宅のテレビ画面で確認し、乗車予約することが出来るようになる筈であります。私が毛細血管に喩えた『自家用車便乗プログラム』の予約も当然のことながら市の光ファイバー事業によって日常茶飯事になるはずであります。

 大学の誘致と日大明誠高校への道路拡幅が今になって『デマンドミニバス』の導入の可能性を切り開いているごとく、光ファイバー計画が数年後の上野原市の発展の基盤となることは間違いないというのが私の確信です。ここでは『デマンドミニバス』検討のコンセプトについて述べていますが、次回は『デマンドミニバス』が経済的に成り立つかどうか、そのビジネスモデルについてコンセプトレベルの検討経過について説明したいと考えます。TN


2007−09−16  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗



『デマンドミニバス導入のための浄財を求める』 その1

第20講   『制度疲労』と上野原の公共交通


  『制度疲労』から『三方1両損』が起こっている

 航空機で『金属疲労』が起こると、人命にかかわる事故が起こります。長年にわたって使い続けていると金属にひびが入って、ある日突然ぽっきりと折れて、飛行機は墜落してしまいます。システムが破壊されてしまうのです。

 これと同じ現象は私たちの社会システムにも起こります。長年にわたって使い続けていると制度が社会の現実に適応できなくなって、社会全体が崩壊して、私たちは生活できなくなってしまうということです。このことを私は『金属疲労』に倣って『制度疲労』という言葉で表現したいと考えます。

 上野原では市民のための公共交通機関の一環として大量輸送を一手に引き受けているバス路線に『制度疲労』が起こっています。
市が毎年2600万円もの補助金を支出して市民のための公共交通を維持しているのに、昼間のバスには乗客がほとんど乗っていないという現実が生まれています。
市が厳しい財政の中から補助金を支出し、バス会社は一所懸命に努力しているにもかかわらず赤字が続き、結果として、市民が納めた税金が無駄に使われ、市民はバスの便が減少して不便を強いられるという『市・バス会社・市民の三方に1両損が発生している』のです。
関係者の懸命の努力にもかかわらず税金が排気ガスとなって雲散霧消され、環境を汚染するという事態になっているのです。

 原因があってこのようなことが起こっていることは確かですが、『現状をただ非難するだけでは何も生まれない。対案が必要である』という私の信念に基づいて上野原市民のために望まれる公共交通バス路線問題について考えを述べることにいたします。


  上野原市交通問題検討委員会の発足

 平成18年5月に私の家に「上野原市地域交通委員会の委員を公募します」という上野原市の回覧板が回ってきました。私はこれに応募したところ、委員長を拝命し、検討に着手しました。この委員会は問題をコンサルタントに丸投げせずに、小委員会を作って「市民と市役所職員の手で問題を解明し、対応策を立案する」という『建議委員会』でした。コンサルタントに丸投げせずに『建議委員会』としたことは行政のヒットと言えるでしょう。

 委員会では、今日まで、問題解決に必要な『デマンドミニバス』のコンセプトを固め、西原・棡原方面に1台、秋山方面に1台、不老下方面に1台、犬目・大田上方面に1台、合計4台のデマンドミニバスを走らせるプロトタイプ案を成案し、いよいよ実行案の策定に取り掛かるところまで議論を進めましたが、デマンドミニバス1台当たり概算で800万円、予備車輌1台を含めて合計5台、合計4000万円の予算確保の壁にぶつかっています。上野原を住みよくするためのデマンドミニバス計画を実現させるために、個人・法人を問わず『浄財の拠出』をお願いしたいと考えています。以下にそのコンセプトについての検討経過と結論を述べます。


  制度疲労の現実:道路運送法の改正と補助金の支出

 平成16年1月に棡原地区の富士急バス日原路線が廃止されました。なぜこのようなことが起こったのか。それは平成14年2月に道路運送法が改正され、「バス会社による路線への新規参入と退出が一定の条件の下で認められ、バス会社は(営業所管内全体が黒字であっても)当該路線が赤字であれば地域の交通会議で認められることを条件に赤字路線から撤退できる」ことになったからです。

 なぜこのような法改正が行われたのか、負け犬根性をもって見ると、「小泉構造改革の地方切捨てではないのか」という批判になりますが、私は「このまま放置したのでは制度疲労で地域社会が崩壊する。地域社会の崩壊を食い止めるためにまず現存の枠組みを破壊して、新しい対応策が生まれ出る切っ掛けを創る」という構造改革の意図によるものと考えています。この法改正は経済学がいう『創造的破壊』を促しているという受け止め方が必要です。

(『創造的破壊』=Creative Destruction:『新機軸(イノベーション)の導入による創造が行われる時には必ず既存のものごとが破壊されるというものの見方・考え方』です。この考え方が出された当時、鉄道が生まれるに当たって馬車が壊滅した事実が引用されました)。

 私たちは、負け犬根性にとらわれて、お上(中央政府)のやることを遠巻きに批判するだけで、座して上野原の地域社会の崩壊に直面するか、新機軸(イノベーション:この場合はデマンドミニバス)の導入に立ち上がって上野原の地域社会の崩壊を食い止め、住みやすい上野原を創るか、上野原の『市民の魂』が問われていると言ってもよいでしょう。

 この法律が改正される以前(=構造改革以前)の枠組みを私は次の通り理解しています。
@ バス路線は許認可事項で、許認可の中には経営が成り立つような水準に運賃を設定することが含まれていた。
A 許認可の中でバス会社は同業他社の自由競争原理による新規参入から守られ、事業を独占していた。
B バス会社は事業を独占する代わり許認可を受けた路線の運行を赤字でも続ける責任を負っていた。

 上野原市では、西原・井戸・不老下・犬目・大田上・秋山の各地区とJR上野原駅を結ぶ遠隔地赤字バス6路線はすべて赤字でしたから、この法律の改正によって、日原路線廃止と同じ手順を踏んで遠隔地赤字バス6路線が廃止される可能性が出て来たのです。これでは困るというので上野原市は平成17年10月からバス会社に年間約2600万円の補助金を支出して市民の生活に必要な赤字バス路線を維持して来ました。この補助金は10月から9月の1年間に支出されますので、平成19年10月から平成20年9月までの補助金支出はすでに決まっています。


  小委員会の検討経過

 小委員会は、平成18年6月に、まず、遠隔地バス路線の地域別人口・年齢構成などの基礎データとバス会社から提出された補助金申請資料によって補助金の算出根拠を確認しました。その中で、富士急バスは、法改正後も法改正以前の考え方、すなわち、上野原営業所管内の黒字路線の黒字額を全体の赤字額から差し引いた後になお残される赤字額を基礎に補助金を申請されていることを確認しました。また、運転手の給与計算の基礎になる労働時間の算出に関して、出勤簿ベースの拘束時間ではなく、『ハンドル時間』すなわち実際に運転していた時間が給与計算の基礎になっていることも説明を受けました。

 私たちはともすれば『赤鉛筆をさかさまに持って、第3者の評論家的感覚で行政が行うことをあげつらって遠巻きに批判する』ことになりがちですが、バス会社は『公共交通機関』としての立場で『乾いた手ぬぐいを絞る感覚』でコスト削減に努力され、なお残される赤字について補助金を申請されていることを市民のみなさまにまず知って頂きたいと思います。



  小委員会の検討の枠組み

 小委員会は「JR上野原駅南口のバスターミナル新設などを含めた理想的な地域交通のあり方の検討は望ましいに違いないが、当面の緊急課題は
@ 『上野原市による年2600万円の補助金の削減』、
A 『補助金の削減対策の範囲内での公共交通システムの再構築』である」という立場に立ちました。
     1年に及ぶ検討の結果、次のような基本コンセプトを決定しました。
@ 黒字バス3路線(駅⇔新井・駅⇔帝京科学大学・駅⇔日大明誠高校)は検討対象に加えずに現状維持を前提とする。
A 市民の朝夕の通勤通学バス路線は遠隔地赤字6路線(西原・井戸・不老下・犬目・大田上・秋山無生野)についも1日1〜3往復確保する。
B 通勤時間帯以外の昼間の赤字6路線のダイヤは廃止し、代わりに現行バス路線から『地区集落にまで入って』それぞれの地区と中心市街地を1日4〜5往復する『乗客定員9人の乗り合いデマンドミニバス』を新設する。

  上野原市の交通大動脈・交通小動脈・交通毛細血管

 この基本的枠組みを決定するに当たって、委員会は次の考え方に立ちました。
@ 黒字バス3路線および遠隔地赤字6路線の朝夕の通勤通学バス路線を市民のための『公共交通大動脈』、新設される乗り合いデマンドミニバスを『公共交通小動脈』と呼ぶ。
A タクシーおよび介護タクシーについては検討対象としない。
B 「より一層の便利さを求める提案」は1年後に予定する見直しの際の課題とし、現時点では、行政・事業者・乗客の3者が本件検討の目的達成のために『三方一両損』の立場に立つことを期待する。
C 中学校統合に伴うスクールバスとしての大動脈・小動脈の利用は必要に応じ検討する。

  交通毛細血管については委員会では議論していませんが、私の頭の中では上野原インフォメーションの求めに応じて書き記した『自家用車便乗プログラム』がそれに当たります。(つづく)TN


2007−09−09  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗



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