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昭和11年7月生まれの70歳。55歳の時に着任した帝京科学大学を今年3月末に退任して『谷口ウエノハラ研究室』の立ち上げに明け暮れる毎日を送っている私は「簡単にものを捨てることが出来ない」のです。
わが家では子どもたちが見ていた1992年製の13インチの見るからに頑丈そうなアナログテレビを見て来ましたが、私も人並みに「BSハイビジョンの番組を見たい」と思ってお皿の形のアンテナとBS受信チューナーだけを買ってきて13インチのアナログテレビでBS放送を見ることにしました。
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NHKの受信料は月1000円ほど多くなりましたが、テレビ全体を買い換えるのに比べるとごくわずかな支出でBS放送が見られるようになりました。地球温暖化とこのようなライフスタイル(生活態度)との関係については機会を改めて考えますが、ここでは『上野原市の光ファーバー事業』の『自家用車乗り合い・乗せ合いプログラム』への意味合いについて考えます。
結論は、上野原市の光ファーバー事業によって私たちは
@「上野原の中山間地の一軒家でも『告知端末』という機器を接続することによって今見ているテレビを使ってインターネットの仕組みを日常生活の中に取り入れることができ、
A上野原の市街地や中山間地を問わず、上野原の市民一人一人が『口頭で意思疎通』が出来たのと同じ隣近所の間柄になることができる、
Bそれ故に『自家用車乗り合い・乗せ合いプログラム』が実現でき、C『少子化・高齢化対策の決め手であり、最後の一手』を実行に移すことができる」ということであります。
私は市の光ファイバー事業によって開けてくるクオリティー オブ ライフ向上の中味について次のようなイメージを持っています。
@ NHKの受信料にUBCによって提供される(プレミアム)テレビサービスの料金を上乗せすると、自分でアンテナとチューナーをつけなくても今見ているアナログTVでデジタル放送を見ることができる、
A UBCのテレビサービスにインターネットサービスを加えると、インターネットサービスに加入している人々の間では市内通話がIP電話によって無料になる、
B 福祉・防災・行政・防犯などの行政サービスの質が向上する、
C 衛星画像・ライブカメラ画像(国道20号線や高速道路の混み具合など)を見ることができる、
D 医療・在宅ケアのアドバイスを受けられる、
E TVにはキーボードは付いていないが、パソコンを用意しなくてもIP告知端末を通して今見ている自宅のTVの画面からリモコンを操作してインターネットを利用することが出来る
みなさん方に是が非でも注目していただきたいことは、
@「上野原市の市街地・中山間地の一軒家でもアナログテレビを買い換えなくてもデジタル放送を見ることが出来るようになることはすばらしい」、あるいは、
A「上野原の人々によって、上野原の人々の日々の生活に関するものごとについての、上野原の人々のための放送だけでなく行政放送がはじめられることもすばらしい」ということですが、私にとってもっとすばらしいと思われることは、
B「パソコンを買わなくてもIP告知端末を通して今見ている自宅のTVの画面に現れるひらがなの文字盤からリモコンで文字を拾いながらインターネットを利用することが出来る」ということ、したがって、「上野原の市街地や中山間地を問わず、すべての上野原市民が一人残らずインターネットで互いに連絡を取り合える隣近所の間柄になる」ということであります。
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この際みなさん方に確認していただきたいのは、民間企業による携帯電話が普及しはじめたころ、上野原では携帯電話が使えない地域が多く残されていたことです。
平成15年の春から初夏にかけて26の地区で夜7時から9時に地域住民懇話会が行われましたが、この席で「携帯電話を早く使えるようにしてもらいたい」という切実な要望が中山間地で何回となく強く出されていたことを思い出しています(私は26回の懇話会の9回目から26回目まで欠かさず18回出席しています)。
上野原市による今回の光ファイバー事業は中山間地から先に光ファイバー工事が進められています。私はこの手順は「利益を事業活動の効率指標とする民間企業ではとても不可能なことで、費用はかかるけれども上野原市が『中山間地の情報弱者優先』の方針を採っていることは『正攻法』である」と高く評価しています。 |
インターネットが普及しはじめたころ、私は松留の大学の宿舎で昼間に大学から送っておいた写真つきのメールを夜遅く見ようとしましたが、メールの受信が終わるまで1時間余の間何をするわけにも行かずにPCの前に縛り付けられたことがありました。
私は今上野原の中心市街地に住んで、このような不便から完全に開放されていますが、同じ不便が、今、上野原の中山間地で情報量の大きいソフトをインターネットからダウンロードされる場合に発生しています。
このような中山間地の不便が市の光ファイバー事業で優先的に解消されるのは「上野原のすべての人々のための行政」として本当にすばらしいことだと思っています。
上野原市の光ファイバー事業によって私たちは『自家用車乗り合い・乗せ合いプログラム』に必要な「情報の仕組み」を持つことが出来るようになっています。問題は「所用で街へ出かける際に便乗を呼びかけるなど面倒なことは自分の性に合わない」とみんなが決め込んでしまえば、
@上野原の河岸段丘のデメリットをメリットに変える、
A中山間地の少子化・高齢化対策の決め手としての『結い』と『手間貸し』を復活させる、
B上野原を首都圏に最も近い田園都市にするなどの可能性を秘めたこのプログラムは瓦解してしまうということです。
そこで私が呼びかけたいのは、『失われた地域社会の手間貸しや結いの精神(パブリックサーバントの精神)』に基づいて「自家用車の便に恵まれない『健常な交通弱者』のために便乗の機会を提供しよう」という有志を結集して、『上野原市の光ファーバー事業』によって上野原のすべての人々が参加する『自家用車乗り合い・乗せ合いプログラム』を成功させることであります。
私が知る範囲で、仏教・キリスト教など世界宗教はすべて「自分が生かされていることへの感謝の念」を説いています。
「自分を生かしてくれている社会」、これが「パブリック」(=公)であると私は日ごろから考えています。自分を生かしてくれている上野原という地域社会システムへの感謝の気持が『自家用車乗り合い・乗せ合いプログラム』という形で具体的に実行されることになればすばらしいと思う次第であります。
次回はそのプロトタイプについて考えます。TN
2007−5−20 谷口ウエノハラ研究室 谷口 文朗
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