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特集 テーマ  上野原の市民は何を目指すべきか
 研究提案 その2 上野原型地域通貨創設論   
  第14講  実行プログラム作成上の留意事項
  第13講 『上野原型地域通貨』と『誕生の3条件』
  第12講 『まわるCリング劇場』−地域通貨による『お助け』
  第11講 『地域通貨の内容』と『ちがさき地域通貨C-リング』
  第10講 大ケヤキシールは『地域通貨の 青い鳥!』 
  第9講  地域通貨の『 5W ・1H 』と「お金」
  参考リンク  『ちがさき地域通貨 C-リングクラブ


上野原型地域通貨創設論
第14講    実行プログラム作成上の留意事項


 私は前回、火が燃え上がるときの条件になぞらえて、新しいものごとが生まれる時には、
@燃える材料=コンセプト、A熱=使命感と情熱、B酸素=それを必要とする環境という3つの条件が満たされる必要があると記しました。
 新しいものごとが実際に日常生活で利用されるようになるには、第6稿で記しました通り @全体の目的の決定、A目的実現のための基本コンセプトの着想(コンシーブすること)、Bアイディアを形にしたプロトタイプの作成(デザインすること)、C量産スペックあるいは実行策の決定(ディベロップすること)、D生産あるいは実行(プロデュースすること)、E販売あるいは費用の回収(マーケットすること)という順序をたどります。


 上野原型地域通貨のプロトタイプをもとに実行プログラムを作成する作業は、第8講の『自家用車乗り合い・乗せ合いプログラム』の場合と同様『設立発起人会』による検討を待たなければならない事柄であります。
その際にこれだけはしっかりと考慮に入れておかなければならないと考えている事柄を下記して『上野原型地域通貨創設論』を終わりとします。



 第1は、『法貨との関係で地域通貨が越えてはならない1線』です。

 第9講で「1930年代の世界不況の時にオーストリアのヴェルグルという町の町長が労働証明書を発行し、33%もの人々が失業している現状を打開するという見事な実績を挙げたにもかかわらず、『通貨の発行は政府の専管事項で、町長が勝手にお金を作ることは認められない』という理由で廃止され、町は再び失業率30%の町に戻って行った」と書きましたように、
『地域通貨は法貨の領域に踏み込むことは許されない』ということです。

 マリリンモンローの有名な映画に「帰らざる河」というのがあります。その中に「ポイント オブ ノーリターン」という台詞が出てきますが、これは「越えてはならない1線を越えていく」ことを意味しています。
地域通貨の場合の『越えてはならない1線』は『お助けをしてあげる立場の人が自分の生計を維持する目的で地域通貨を受け取ってはならない』ということです。
別の言い方をすると、『スタイペンド:stipend:ボランティア活動をした人に支払われる謝礼金』の範囲を超えないということでしょう。
さらに別の言い方をすると憲法がいう『納税の義務』に抵触するようなことをしてはならないということです。
取引をしてその対価を円で受け取り、法律にしたがって会計処理する場合に消費税・所得税・法人税などの税務計算、管理計算、仕事に携わった人々の賃金計算、年金や健康保険の計算と納付などなど、それだけで地域通貨の事務局は「パンク」してしまいます。


  第2は、これも第9講で書いたことですが『地域通貨を紙くずにしてはいけない』ということです。

 そのために上野原で地域通貨を発行する場合は発行額に見合った金額を法貨で預金して、いつでも即座に発行済みの地域通貨を回収できるようにしておくことが必要と私は考えています。
『地域通貨は地域の仲間からの借金証文』だからです。上野原では大ケヤキシール160枚が500円と交換されるという長い歴史と実績がありますので、「大ケヤキシールをそのまま地域通貨として使うことが許される場合は紙くずになる懸念はない」ということになります。これはすばらしいことであります。『大ケヤキシールは地域通貨の青い鳥』と書いたゆえんです。


 そのために上野原で地域通貨を発行する場合は発行額に見合った金額を法貨で預金して、いつでも即座に発行済みの地域通貨を回収できるようにしておくことが必要と私は考えています。
『地域通貨は地域の仲間からの借金証文』だからです。上野原では大ケヤキシール160枚が500円と交換されるという長い歴史と実績がありますので、「大ケヤキシールをそのまま地域通貨として使うことが許される場合は紙くずになる懸念はない」ということになります。これはすばらしいことであります。『大ケヤキシールは地域通貨の青い鳥』と書いたゆえんです。


  第3は、『信用創造についてのけじめ』です。

 茅ヶ崎の先例で学んだ通り、紙券は入会金と見合いに発行されるので信用創造は起こりませんが、通帳では借金(当座貸越)が可能となっています。上野原型のプロトタイプでは、お助けを必要とする人々には入会金を限度とした借金(赤字)を認める一方で黒字の人から寄付を求めて、お助け活動が循環しやすくなる仕組みを作る必要があります。


  第4は、『地域通貨は時とともに目減りする仕組み』にしなければならないということです。

 オーストリーで最初の地域通貨が見事な成果を挙げたのは『労働証明書の通用期間が決まっていて、それを過ぎると切手を貼らなければならない』という形で『マイナスの金利が付く通貨』であったことです。
経済の停滞は『理由はどうであれ、誰かがどこかでお金を溜め込む』ことから発生します。経済の命である循環が滞るからです。
地域通貨を貯め込むことは『お助け活動が停滞する』ことを意味します。お助け活動という根本目的の効果を阻害する要因は排除しなければなりません。『地域通貨は貯め込む通貨ではない』ことをはっきりさせなければならないのです。

  第5は、『地域通貨の売買(ブローカー)業務の禁止』です。

 これは『起こりえるケース』として考えているだけですが、「実際にグッズやサービスにお金を支払って手に入れるケヤキシールの量が十分でなく、ケヤキシール160枚を500円より高い値段で売買すること」が起こるかも知れません。
 もしこんなことが起これば(円とドルの為替レートのような)円と地域通貨の交換レートが生まれるかもしれません。
これほどまでにケヤキシールを必要とするお助け活動が活発に行われれば以って瞑すべしですが、これは「商店の繁栄というケヤキシールの根本目的に悖る行動」でありますから、禁止すべきでしょう。
 但し、事務局だけは人々の手元に残って眠っている半端な枚数のケヤキシールを160枚500円のレートで買い上げて、お助けを必要とする人々、とくに、通帳が赤字になっている人に対してプレゼントすることは認められてよいと思っています。
 テレホンカードでも何でもそうですが、カードやシールの発行元には使われることなく死蔵されているカードやシールの分だけ余剰金が発生するものなのです。このことは死蔵によって発生する余剰金をお助けを必要とする方のために役立てる効果をもたらします。

  
第6は、『人々の生活を司る行政=市が地域通貨を積極的に活用すること』です

 私はケヤキシールを地域通貨として活用する計画を小泉内閣の構造改革特区に提案しました。
その中で、地域通貨の値打ちを確保すると同時に地域通貨の流通量(発行残高)を増やす手段として、市民が市役所に対して提供するサービスに対してマーケットプライスの半額のレートの謝金を市役所が地域通貨で支払い、市が提供するサービスに対してはマーケットプライスで地域通貨による支払いを認めることを提案しています。
 具体的にいうと、元気なお年寄りが『地域のふれあいサロン』で子守をしたり、お母さんが小学生の登校下校の際の安全パトロールをした場合などに、マーケットプライスに従って1時間800円のレートで謝金を地域通貨で支払い、地域通貨を受け取った人が住民票や印鑑証明を交付してもらったり、秋山温泉へ行くときは1時間1600円のレートで支払いに当てることが出来るという仕組みです。
 こんなことをすれば行政は赤字になるといわれるでしょうが、秋山温泉の稼働率が上がる、あるいは、お年寄りが秋山温泉に行きはじめる前と後で国民健康保険の負担が軽くなって市の財政にお釣りが来るほどの効果があると私は考えています(私は温泉によく行きますが上野原に来てからは歯医者さん以外に健康保険はほとんど使っていません)。


 地域通貨の具体化はインターネットを使ったソーシアルネットワークシステムと違って、目に見えて、具体的ですから取り組みやすいと思います。

 地域通貨を具体化させる活動に興味をもたれる方にご参加いただいて、発起人会が立ち上がればすばらしいと思っています。関心ある方は上野原インフォメーションまでご連絡下さい。TN



2007−7−29  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗

上野原型地域通貨創設論
第13講    
『上野原型地域通貨』と『誕生の3条件』


   前回『茅ヶ崎の地域通貨C-リング』の仲間に新たに加わった3人と地域通貨で5%まで代金の支払いを認めている中華料理店のご主人を加えて合計4人の『お助け活動』を紹介しました。
   
   このストーリーの中で、地域通貨が「仲間内だけの『お助け』に対する『感謝の気持ち』を運ぶ役割を果たしていること、その働きは『生活に潤いを生み出してくれる潤滑剤』であること」を見ていただけたでしょうか。

   また、お助け活動の中味が本当にさまざまで、「自分もお助け活動の仲間に入って、人助けの活動に参加できる」ことを感じ取って頂けたでしょうか。

   私は、坂が多く、道が狭い上野原市では「自分がして上げられること」と「自分がして貰いたいこと」の中に、『車で送迎』と表現されている「ちょっと出かける際の自家用車便乗」が沢山入ってくることを期待しています。

  私たちにとって大切なことは、「地域通貨の発行・使用対象と使用条件およびその管理・運営」はそれぞれの地域の実情に応じてさまざまでありますので、『上野原の実情に即した助け合いの仕組み』と『お礼の気持ちを支払う地域通貨の仕組みを創り出すこと』であります。

    『上野原の実情に即した助け合いの仕組み』の基本は、

@  『SOS=助けて欲しい』・『了解=助けに行く』という情報伝達が早く・正確に行われること、
A  道路と車輌を使う『お助け活動』が適時・的確に行われることです。

   『SOS』・『了解』という情報伝達の仕組みは市の光ファイバー計画によって上野原の一番奥まった集落にも完備される日が近いと私は思っていますが、消防車や救急車による緊急出動ではなく、『日常生活の中でのちょっとしたお助け活動』が円滑に行われるための『交通輸送=人の移動』の仕組みが十分整っていません。

   私は人の移動は人間の血液の移動になぞらえて『大動脈・小動脈・毛細血管』わけて考えると分りやすいと考えていますが、この問題は「上野原、何をなすべきか」の次の課題として取り上げることとして、ここでは先を急いで、『上野原型地域通貨』の『WHAT=具体的内容』について考えます。

   ここでは第11講で述べた地域通貨の共通点にそって『上野原型地域通貨』のイメージを描くと次の通りです。

@ 地域通貨を運営するボランティア団体:「新しくボランティア団体を立ち上げる」か、「すでに地域に根ざした活動を行なっている団体の新しい活動分野として地域通貨活動を取り入れるか」が選択肢となるでしょう。
A 地域通貨を使う人の名前の登録:参加者への呼びかけ・申込書の作成・名簿の作成・仲間であることを示す標章・自家用車のフロントガラスにつけるワッペンなどの作成などについて検討する必要があります。
B 入会金の収納:入会金の金額の決定・収納・管理などについて規約を作って、間違いのないようにする必要があります。
C 地域通貨の「名前」と「券面」:私は『大ケヤキ』あるいは『風の幸』という名前を候補として、券面は『所定の台紙に貼り付けた大ケヤキシールを10枚単位で地域通貨として使うことが出来ればすぐに実行できると思っています。
D 地域通貨の授受:「台紙に貼ったケヤキシールによる支払い」を原則として、「通貨券の持ち合わせがない場合には入会金の範囲内での通帳支払い」を並行して認めるのが合理的と思っています。(茅ヶ崎のケースでみられたごとく、地域通貨が手元にたくさん集まる黒字の人と赤字になる人が出て来ます。この場合、黒字の人は『台紙1冊分を500円で換金するのもよし』、『事務局に寄付していただいてお年寄りの通帳の赤字を相殺するのもよし』ということになると地域の助け合いの循環が生まれることになります)。
E 地域通貨を授受した場合の挨拶:『ありがとう』・『サンキュー』・『ダンケ』・『メルシー』・『シェーシェー』(謝謝)・『カムサ』(感謝)などなど「感謝の一言」がよいでしょう。
 
   そのためには、「ケヤキシールを貰えるお店が上野原の中心市街地だけでなく、上野原中のすべてのお店でもらえるようになることが大切です。しかも物を売るお店だけでなく、理容・美容・学習塾などのサービスを提供するお店でもケヤキシールを貰えるようになることが大切です。
大ケヤキシールを地域通貨に使うことは地域の経済を活発化させる効果が伴うことを私は期待しています。商品を買うのに八王子まで出かけてお金を払う人でも理容・美容・学習塾などのサービスは上野原でお金を払っている人が多いはずです。サービスは地域密着性が高いからです。

   
   ここで新しいものごとが生まれる際に必要な条件について考えを述べておきます。

   みなさんご存知のように、火が燃え上がる時には3つの条件が満たされる必要があります。
   第1は『燃える材料』、第2は『熱』、第3は『酸素』です。

   大切なことは、どの1つが欠けても火は燃え上がりません。私は新しいものごとが創り出される時に、火が燃え上がる時と同じように3つの条件が満たされる必要があると考えています。
  第1は、「燃える材料」に喩えられる「コンセプト」(アイディア)、
  第2は「熱」に喩えられる「使命感と情熱」、
  第3は「酸素」に喩えられる「それを必要とする周囲の状況」です。

   この考え方は富士写真フィルムの『写ルンです』が生み出されたプロセスやヤマト運輸の『宅急便』が生み出されたプロセスに見られる共通点で、「お客さまが求めていることを見抜いて、それを形にして、お買い上げ頂いたり、実際にご利用して頂いたりする『営業活動』にも共通していると私は考えています。

  上野原の地域通貨が創造されるために必要な3つの条件は何でしょうか。

  第1の条件の『燃える材料=コンセプト』は「5W・1H」の中で言えば「WHY」(目的)を実現するためのアイディアです。

   私はシリーズの第10講で上野原の地域通貨の目的は「地域社会の助け合いの支払手段であり潤滑剤である」と述べています。
上野原の中山間地では情け容赦ない少子化・高齢化の流れのなかで、「お助け」を必要とされるお年寄りや子育て最中のヤングママが毎日の生活と格闘しておられます。
   地域通貨のコンセプトは『お年寄りやヤングママが助けてもらって感謝の気持ちを表現する道具』です。
   ここで1つ述べておきたいことは『お助けをしてあげる立場の人が自分の生計を維持する目的で受け取るのは地域通貨ではなくて法貨である』ということです。

  第2の条件は『熱=使命感と情熱』です。

   使命感と情熱は人それぞれの気持ちの中にある問題ですが、私は『上野原市の中山間地にお住まいのお年寄りの方々やヤングママがお助けを求めやすい環境を作ろうとする使命感』であると考えています。

  第3の条件は「酸素=それを必要とする周囲の状況」です。

  『地域通貨は感謝の気持ちを伝える手段』ですから、ここではそのひとつ奥にある『お助け活動へのニーズ』が強いことを確認するにとどめます。


   私は上野原市が昨年5月に募集された「地域交通問題検討委員会」の委員に応募し、委員長を拝命して遠隔地の赤字バス路線の補助金削減問題の検討を続けていますが、その中で赤字バス路線が走行している中山間地を対象に行なったアンケートで、『自家用車に便乗する機会のないお年寄りの方々の叫びとも受け取れる切実な声』に接しています。

   このような声に対応する仕組みを早く作らなければなりません。TN

2007−7−22  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗



上野原型地域通貨創設論
第12講    『まわるCリング劇場』−地域通貨による『お助け』


  「百聞は一見に如かず」と言います。
これは「コンセプト=アイディア」がすでに形になっている場合に言えることですが、世の中に未だ存在していないものごとを説明する時には見てもらうわけには行きませんので、どうしても「例えを用いて言葉で語る」しかありません。
日本では800を超える地域通貨が実際に使われていますが、上野原にはまだ地域通貨はありません。
このような場合、まず先例を学ぶのが合理的です。


  前回紹介した「茅ヶ崎市のC-リングクラブ」のホームページには『まわるCリング劇場』があります。

「リングとは『顔の見える関係』である」と説明されているのですが、そこをクリックすると、茅ヶ崎の『ち』が頭文字の「ちーこ さん」(コーヒー店主)と茅ヶ崎の『が』を頭文字にもつ「があ さん」(年金生活のおじいさん)と茅ヶ崎の『さき』が頭文字の「おさき おばあさん」が登場します。
  3人は1200円を支払って、「1200Cの紙券」と「C-ブックという通帳」を受け取ります。3人は事務局で作成された「自分がして上げられること」と「して貰いたいこと」のリストを見て「地域通貨による助け合いの活動」をはじめます。
3人とも「1200Cの紙券」を持っているのですから助けてもらったお礼に紙券を支払ってもよいのですが、ここでは「通帳によるお礼のやり取り」が紹介されています。


 まず、「コーヒー店の ちーこ さん」が「おさき さん」に「家庭菜園の作り方を教えて!」と頼んで、助けてもらい、500Cを支払います。 「ちーこ さん」は自分の通帳に「▲500」と記入し、「おさき さん」は自分の通帳に「+500」と記入し、お互いに相手の通帳にサインして「ちがりん」と言って握手をします。 
 
  次はおばあさんが「足が不自由になったので、誰か愛犬ポチを連れて散歩してくれるとありがたいね」と助けを求めますと、「があ さん」が「おさきさん 任して下さい! 私が毎朝運動をかねてやりますよ。C-ブックで1回50C-リングでお願いします」ということになって、「おばあさん」は自分の通帳に「▲50」と記入し、「おじいさん」は自分の通帳に「+50」と記入し、お互いに相手の通帳にサインして「ちがりん」と言って握手をします。

 その次は、通帳に+50Cをもらった「があ さん」がC-リングの使える「地域中華」(ちいきつうか)という中華料理店に出かけて1000円の中華定食を食べて、950円と通帳に貯まった50Cを払って、笑顔で「ちがりん」と言いながら握手をします。「があさん」の通帳には ▲50Cがついて残高ゼロ、中華の店のご主人の通帳には+50Cがつきます。

 ここまで地域通貨は通帳の上で3回取引に使われています。お昼のピークが過ぎたとき、「地域中華」のご主人は「ちーこ さん」のコーヒー店に出かけます。400円のブレンドコーヒー1杯と地域通貨200Cでサービスされる2杯目のブレンドコーヒーを飲んで、現金で400円と通帳で200Cを支払います。その結果、「地域中華」のご主人の通帳は ▲150C、ちーこ さんの通帳は ▲300Cになっています。

  茅ヶ崎の地域通貨の場合は支払えるだけの残高が通帳になく、借金の状態になっていても「付けで買う」感覚でお助けを求めることが出来る仕組みになっています。この現象は「当座貸し越し」そのものと言ってよいでしょう。

  ここでこのC-リング劇場に登場した5人の通帳残高を確認しておきましょう(相手氏名の敬称は省略します)。

    おさき おばあさん の通帳
月日 相手氏名 お助け内容 C受取り C支払い 残 高 相手署名
4−1 ちー 家庭菜園 +500 +500 ちー
4−3 がー 犬の散歩 ▲50 +450 がー

   があ さんの通帳
月日 相手氏名 お助け内容 C受取り C支払い 残 高 相手署名
4−3 さき 犬の散歩 +50 +50 さき
4−4
地域中華 中華定食 ▲50 ±0 地域中華

   地域中華 ご主人の通帳
月日 相手氏名 お助け内容 C受取り C支払い 残 高 相手署名
4−4  がー 中華定食 +50 +50 がー
4−5 ちー コーヒー ▲200 ▲150 ちー

  ちーこ さん の通帳
月日 相手氏名 お助け内容 C受取り C支払い 残 高 相手署名
4−1  さき 家庭菜園 ▲500 ▲500  さき
4−5 地域中華 コーヒー +200 ▲300 地域中華

  4日間の「取引合計は700C」、残高は 「おさきおばあさん+450」、「がーさん±0」、「地域中華ご主人▲150」、「ちーこさん▲300」とそれぞれ異なっていますが、4人の残高の合計は「±0」となっています。


  以下に紹介しますのは茅ヶ崎地域通貨のホームページに掲載されている「助け合いメニュー」の事例です。


家事・家庭支援:・掃除・洗濯・ベビーシッター・子どものお世話・留守番・病気の時の家事援助・高いところの荷物とり・電球の取替え・網戸の取替え・エアコンフィルター掃除・窓サッシ洗い・整理整頓手伝い・ごみの持ち出し・衣服の繕い・カーテン作り 修理・メンテナンス:・包丁砥ぎ ・電気器具修理 ・車の修理 ・バイク修理 ・自転車修理・おもちゃの修理・のこぎり目立て・ふすまの張替え・障子の張替え・水まわり修理・屋根等塗装  福祉:・介護・お年よりの手を引いて散歩・お年よりに替わって買い物・話相手・本の読み聞かせ・墓参の付き添い・車椅子での外出介助・車椅子ダンス・不登校児の話相手  運搬・移送:・保育園、幼稚園への送迎・病院への送迎・薬の受け取り・車で送迎・大きな荷物の運搬・大型トラック運転・運転代行・引越し手伝い ガーデニング:・水やり・ガーデニング全般指導・庭のデザイン指導・盆栽指導・庭木の手入れ・剪定・草むしり・花の植え替え指導・松ノ木の剪定指導・ハーブの作りかた指導 事務サービス:・事務局の手伝い・ビデオのダビング・プログラミング・ファイル作業・コンピユーター入力・ビデオ録画・店番・電話番・役所への手続き手伝い・印刷代行(コピー)・文章校正・ホームページ作成・チラシ作成・事務書類作成・事務局雑務手伝い・ワープロうち・翻訳 一般サービス:・モーニングコール・雛人形飾り・後片付け・車の洗車・犬の散歩・猫の世話・結婚式の司会・法事のお世話・農業手伝い・田植え手伝い・パッチワーク・地域の歴史散歩案内・イベント会場設営手伝い・イベント時写真撮影・海岸清掃・川の清掃・広場清掃・絵画モデル・夜警・落書き落し・チラシ配り  指導・翻訳:・出前授業・料理指導・家庭菜園の指導・家庭教師・インターネット手ほどき・パソコン・デジカメ指導・料理手ほどき・ピアノ指導・ワープロ指導・子どもの勉強教え・歴史の勉強教え・昔ばなしを聞かせる・絵手紙指導・楽器指導・写真の撮とり方指導・スペイン語指導・英語指導・ドイツ語指導・韓国語指導・犬のしつけ・魚つり指導・熱帯魚の飼育のこつ指導・洋ランの育て方手ほどき・日曜大工指導・メイクアドバイス・ファッションアドバイス・着物着付け・編み物指導・手芸の手ほどき・自家製ケーキ作り 相談・コンサル・アドバイス:・室内装飾・インテリアアドバイス・室内リニーユーアルコンサル・家づくりの相談相手・子どもの教育相談・縁結びのお世話・家庭の省エネアドバイス・旅行計画アドバイス・絵画アドバイス・情報収集  趣味・演芸:・囲碁の相手・将棋の相手・菓子づくり手ほどき・詩作・歌唱・朗読・演劇・楽器演奏 スポーツ:・野球の審判・スポーツ全般指導・コーチ・水泳指導・テニス相手・卓球相手・自転車ツーリング相手・スポーツ大会手伝い 健康:・マッサージ・針灸・カウンセリング・指圧・ヨガ・気功・催眠療法・各種セラビー・歯科自由診療 精神:・占い・瞑想指導・ヒーリング 貸し出し:・子ども服・家具・スポーツ用具・印刷機・ガーデニング用品・カメラ・芝刈り機・電動工具・ビデオカメラ・デジカメ・ミシン・別荘・間貸し・おもちゃ 雑務:・身体を動かす事なら何でも商品・各種商品のセールスプロモション(商店、学校の売店)・食堂・飲食店(含むバー、喫茶店)TN


2007−7−15  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗

上野原型地域通貨創設論
第11講    『地域通貨の内容』と『ちがさき地域通貨C-リング』

    
    地域通貨の「実施場所=WHERE」と「目的=WHY」について述べてきましたが、今回は「内容=WHAT」です。
       

茅ヶ崎市の地域通貨  C−リング(紙券)とC−ブック(通帳)

  わが国で地域通貨が積極的に紹介されたのはバブルが破裂した後に物価が下がり、経済が停滞した1990年代の終わりの頃でした。NHKテレビで「人にやさしいお金」というコンセプトでアメリカのイサカ市の「hour」の例が紹介されたり、2000年2月にスタートした北海道栗山町の「てまがえ倶楽部」の『クリン』が紹介されていました。
 私は北海道まで調査に出かけることは出来ませんでしたが、「地域通貨は今にはじまったことではない。昔から行われてきた手間貸しそのものだ」という1人の老婆の発言をメモしたことが思い出されます。

  私は地域通貨を卒業研究のテーマに取り上げた学生諸君とともに、滋賀県草津市の『おおみ』と千葉市の『ピーナッツ』がどのように運営されているのかを見学に行ったことがあります。
 山梨県では、八ヶ岳のふもとの『大福帳』や甲府駅前商店街の『kofu』なども見学しています。最近では、高校のクラスで机を並べ、大学で同じ学部に学んだ杉村一憲さんが定年退職後の地域活動として事務局長を務められている茅ヶ崎市の『ちがさき地域通貨 C-リングクラブ』をインターネットで学んでいます。

  
    それらの共通点は次の通りです。

@ 地域通貨はボランティア団体によって運営されている
A 地域通貨を使う人の名前は登録されている
B 登録の際に入会金が必要とされている
C 地域通貨にはそれぞれに相応しい「名前」と「券面and/or通帳」がある(「and/or」というのは「券面か通帳」あるいは「券面と通帳の両方」を意味する便利な表現です)
D 地域通貨の授受は「地域通貨券による場合」か「通帳による場合」、あるいは「地域通貨券と通帳を併用する場合」がある
E グッズ・サービスを互いにやり取りしで地域通貨を授受した場合は「ありがとうの挨拶」をしたり「握手」をする
F 地域通貨の発行・使用対象と使用条件およびその管理・運営はそれぞれの地域の実情に応じてさまざまで、定型はない(地域通貨についての法律は未だ制定されていません)

   ここではインターネット時代ですから、「C-リングクラブ」と検索欄に入力して検索すると直ちにPCの画面に出てくる『ちがさき地域通貨 C-リングクラブ』を紹介しながら、地域通貨の『WHAT』、すなわち、地域通貨はどのようなものごとで、どのように使われて、どのような効果を持っているのかをインターネットのホームページから学ぶことにしましょう。
 
    ホームページから学ぶ方法は、手元のメモをたよりに私が見学した事例を学ぶよりもずっと「早くて・正確」に事例を学べることを意味します。
 それだけでなく、インターネットを利用されている方々とは同じ情報を共有し、共通の認識を持つことが出来るという非常に大きな利点があります。
 これはこれまでの情報手段では全く出来なかったことで、市の光ファイバーネットワークで上野原の家庭がネットにつながるとこのホームページを見てみんなで話し合い、考えることが出来るようになるのです。
 市役所や支所の入り口に置かれているインターネットにつながっているPCで茅ケ崎市の「ちがさき地域通貨 C-リングクラブ」を呼び出して、1人でも多くの方がインターネットの世界に触れていただけるとありがたいのですが・・・・・。
 ご自分でパソコンを操作できない方でも市役所や支所の窓口で「C-リングクラブを呼び出して欲しい」と頼まれると、誰かが手助けしてくれると私は思っています。私は棡原支所で実際にお世話になりました。みなさま方もぜひ試してみて下さい!

以下は「C-リングクラブ」のホームページからの紹介です(文責:谷口)

  茅ヶ崎市地域通貨誕生の経緯:

@ 2001年9月、茅ケ崎市の市民委託公開講座の制度により「地域通貨」講演会を開催。市民、商店会連合会会長、環境市民会議会長等が参加
A 2002年8月 、商店会連合会に「なるほど地域通貨研究会」が発足
B 2003年1月「ちがさきスタイル地域通貨を考える会」が発足
C 2004年2月「ちがさき地域通貨C−リングクラブ」に発展・現在に至る。
D この間、茅ケ崎市は、
2003年3月、公募市民が参加する環境審議会の答申を受け「地域通貨を用いた環境まちづくりの気持ちとサービスの循環」を重点プロジェクトの1つに位置づけ「ちがさきエコワーク」に調査・研究を依頼。

同年6月、「エコワーク地域通貨研究会(事務局:環境政策課)」を設置。
E 「C−リングクラブ」と「エコワーク地域通貨研究会」は、情報交換・交流を密接に行い、必要に応じて連携しながら、地域通貨の普及・発展に尽力。


  地域通貨の発行:

  個人は年会費1200円で1200C(地域通貨の単位)の紙券とブックと呼ばれる通帳を、事業者と団体は年会費5000円で5000Cの紙券と通帳を受け取ります。
 目安は1C=1円で、事業者と団体には事務局から15,000Cが貸し出されます。
 紙券は10C・50C・100Cの3種類です。地域通貨の授受は通帳で行い、手元に紙券がなくても通帳で支出と収入を記録して取引が出来るようになっています。その意味で紙券は補助的手段とされています。
 通帳は「会員だけが使用する当座預金通帳」と思えばよいのでしょう。

  紙券は市のイベントや市の活動に協力した会員以外の個人にも市から支給されます。
 また、C-リングクラブ会員店からプレゼントされることもあります。従って紙券は会員以外の市民もC-リングクラブ会員店で使うことが出来るようになっています。  

  地域通貨の使用:

  会員同士でグッズとサービスのやり取りを通して助け合いをした時に「相対で値段を決めて通帳で決済し、『ちがりん』と笑顔で言って握手をする」という手順で地域通貨が使用されます。その場合、サービスについては1時間当たり500Cが目安とされています。
またC-リングクラブ会員店で買い物や食事をした場合に5〜10%を紙券で支払うことが出来るようになっています。

  運営・管理:
  
  入会時に「自分がして上げられること」と「して貰いたいこと」を事務局に提出しますが、事務局はそのリストを全会員に配布します。
 会員はそれを見て個別に連絡を取り合って取引する手順になりますが、取引の内容と対価と決済はすべて当事者の良識に任されています。
 通帳のプラスとマイナスをすべての会員について合計するとゼロになりますが、Aさんは大きなマイナス、Bさんは逆に大きなプラスということが起こり得ます。この場合、事務局はプラスを買い取ることはありません。
 また、余ったC−リングと円を交換することは規約によって禁止されています。

  
  この茅ヶ崎C-リングクラブのホームページには「まわるCリング劇場」というページがあって、地域通貨の利用方法についてイラストを用いて具体的に説明していますの大変勉強になります。
  また、全国の地域通貨のリストや有名な欧米の地域通貨の説明などにもリンクしていますので、図書館以上に地域通貨について学ぶことが可能です。TN


2007−7−8  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗

上野原型地域通貨創設論
第10講    大ケヤキシールは『地域通貨の 青い鳥!』


   地域通貨の『5W・1H』すなわち、地域通貨の「目的=WHY」・「内容=WHAT」・「担い手=WHO」・「実施時期=WHEN」・「実施場所=WHERE」・「実施手順=HOW」について考えるに当たって、

   まず最初に『WHERE』=「実施場所」からはじめましょう。
   東京に住んでいた頃のことですが、私は商店街のスタンプで大きくて重い黄色のホーロー鍋をもらったことがあります。
15年前に松留の大学の宿舎に住むようになって時々上野原の『大ケヤキシール』を貰うようになりました。
その時「大ケヤキシールはこれまで経験した商店街のスタンプと違うな」と思いましたが、その仕組みを教えてもらって折に触れて考えた結果、上野原の大ケヤキシールは『地域活性化のための眠れる大資源』であり、『地域通貨の青い鳥』であると考えるようになりました。


   第1の理由は大ケヤキシールが『閉鎖系の地域密着型スタンプ』であることです。
「閉鎖系」という意味はスタンプを貰っても上野原でしか使えないということです。
このことは『少数の特定された仲間内だけでやり取りする地域通貨と同じ』ということです。
「閉鎖系」という考え方の反対側には「開放系」という考え方があります。
「開放系では不特定多数の人々が分け隔てなく誰でも参加できる」ということです。
これを地域通貨に当てはめると「開放系の地域通貨は日本に住んでいる人なら誰でも使える」ということになりますが「わが国で誰もが使える地域通貨はすなわち法貨に他ならず、その発行・管理は政府だけに許された仕事」ということになって、勝手に「開放系の地域通貨を作る」ことは許されないのです。


   第2の理由は大ケヤキシールは『所定の台紙に160枚のシールを貼り付けて都留信用組合に持っていくといつでも500円と交換される』ということです。
前回お金について記した際に、私は「地域通貨との関わりでまず第1に強調しなければならないことは『地域通貨を紙くずにしてはいけない』ということです。
なぜなら地域通貨は地域の仲間からの借金証文だからです」と書きましたが、『大ケヤキシール160枚が500円と交換される仕組みは大ケヤキシールが決して紙屑にはならない』ことを保障しているからであります。
ホーローの鍋と交換される商店街の一般的なスタンプとは信用度に雲泥の差があると言ってよいと私は思っています。
「大ケヤキシール1枚=3.125円」の現金に等しいのであります。
上野原で作られる地域通貨の『WHERE』(場所)は、「上野原の仲間うちだけで通用する」という地域通貨の定義従って、当然のことですが『上野原』ということになります。


   次は地域通貨の『WHY』=「目的」ということですが、

    私はこれまで「自家用車に便乗させてもらって感謝の気持ちを合法的に支払う手段」という説明をしてきましたが、より広い立場で『地域通貨のWHY』=「目的」について確認しておきたいと思います。
地域通貨は、第6講で述べましたとおり、「人々の善意に対する感謝の気持ちを表す手段」で、感謝を表す一例が「自家用車に便乗させてもらってありがとう」ということなのです。
「赤ん坊を見てもらってありがとう」というのはベビーシッターということになり、「買い物をしてもらってありがとう」、「野菜を頂いてありがとう」、「ちょっとパソコンを教えてもらってありがとう」などなど「いろいろなありがとう」が考えられるわけですが、「子供たちに昔話を聞かせていただいてありがとう」ということになるとお年寄りの出番ということになります。


   「・・・してもらってありがとう」というのは「手間貸しや結い」という形で昔から行われてきたことで、決して新しいことではありません。
ただ昔の「手間貸しや結い」の場合は「ありがとうの気持ちを『付け』という形で借りていた」と考えると分りやすいと思います。
地域通貨は「ありがとうの気持ちを付けにしないでその場で支払うための手段」ということになるのです。
従って、『地域通貨のWHY』=「目的」は「地域社会の助け合いの支払手段であり潤滑剤である」ということが出来るのです。

   「地域通貨が日常生活の潤滑剤」という意味は「自家用車に乗せてもらって円を支払うと白タク行為で違反になりますが、地域通貨なら違反にならない」という点を見て頂くと分りやすいと思われますが、ベビーシッターや買い物をしてもらってありがとうの気持ちを円支払うと『あの人は現金な人』ということになる一方で『何もお礼をしない』とお互い何か気まずさが残るというのが人情の機微ということではないでしょうか。

  地域通貨はもともと「ありがとうの気持ちを支払う手段」ということですからこのような気遣いが不要ということになるわけです。
「地域通貨が日常生活の潤滑剤」という本当の意味はここにあると私は考えています。


  私は第6講で「地域通貨は定価がない世界」と書きましたが、そのことについても付記しておきたいと考えます。
私たちは、法貨で買い物をしたり電車やバスに乗る時に、値段が前もって示されているのが当たり前と思っています。
私はこの目で見て、実際に体験したことはないのですが「アラブ世界では値札がなく、同じものをお金持ちには高く売るのが当たり前」といわれています。
地域通貨の世界も「定価がない」という点ではアラブ世界と同じと私は考えています。
感謝の気持ちは人それぞれで、分相応の額を支払えばよいということなのです。
私たちは「助け合わなくては生きていけないという宿命」を背負って生きています。
地域通貨はこの助け合いを円滑にしてくれるという意味で社会の潤滑油というわけです。


   私たちの日常生活で法貨(円)を受け取ったり、円で支払ったりしていますが、円を授受する生活の中では効率が重視され、できるだけ感情を抑えた「ビジネスライクなてきぱきした生活」が求められていますが、その結果、人と人の絆が失われ、人間関係がドライになり、生活が味気なくなっています。

    『地域通貨のWHY』=「目的」は「失われつつある地域の人々の交流を促進し、助け合いの絆を復活させること」であります。
今、上野原の中山間地では少子化・高齢化が急速に進んでいます。このままでは地域社会が崩壊してしまいます。TN


2007−7−1  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗

上野原型地域通貨創設論
第9講    地域通貨の『 5W ・1H 』と「お金」


  私は第4〜8講で『地域通貨で支払う自家用車乗り合い・乗せ合いプログラム』の中の「自家用車便乗プログラム」について述べてきました。その狙いは、

@   このプログラムによって自分で車を運転したり、自家用車に乗せてもらう機会のないお年寄りや子育て最中のヤングママが自家用車に便乗させてもらう仕組みが生まれる⇒

A   自家用車に便乗させてもらえるようになると、上野原の河岸段丘特有の「坂が多い、道が狭い」という避けて通れない生活の不便が解消する⇒

B   この不便が解消すると「坂が多い、道が狭いという河岸段丘のデメリットは、河岸段丘が生み出してくれる風のおかげで、花がきれいで、野菜や卵がおいしくて、健康で長生きできるという『風の幸』というメリットに『大逆転』する」⇒

C   この『大逆転』は上野原市の光ファイバー事業によってはじめて可能になる⇒

D   その理由は「光ファイバー事業によって上野原の中心市街地から西原や秋山地区の中山間地の一軒家まで、上野原の市民のひとり1人が『隣近所の間で昔行われていた手間貸しや結いによる助け合いの絆』によって結ばれる」からである⇒

E   「自家用車便乗の仕組みは雪かき・屋根葺き・田植えなどに代わる地域社会の『助け合いの現代版』で、『少子化・高齢化による地域社会の崩壊を食い止める方策』になる」⇒

F   この仕組みが出来上がれば「上野原は首都圏に一番近い自然豊かな住みやすい田園都市に生まれ変わる」ということです。

  このプログラムは「所用で街へ出かける際に便乗を呼びかけることは面倒だけれども住みよい街づくりのためにがんばってみるか」という形で1人でも多くのドライバーのお力添えがあってはじめて実現することですが、いまひとつ、「自家用車に便乗させてもらってありがとうの気持ちを『円(法貨)で支払うと白タク行為』で違法になる」のでどうしても一工夫しなければならないことです。

 私たちは法律に違反することはできません。そこで「地域通貨で『ありがとうの気持ち』を支払いましょう」ということなのです。
地域通貨は「河岸段丘の上野原のデメリットを自家用車便乗の仕組みによってメリットに大逆転させる上でどうしても必要ないま1つの仕組み」ですが、
「光ファイバー事業によって仲間内だけで通用する地域通貨の個々人の受払いと残高をその日のうちに記録する」ことが可能になります。

  このシリーズの第6講で書きましたように、私は「地域通貨で支払えば違法にならない」ことを小泉内閣構造改革特区に提案して確認しています。

  次の問題は「地域通貨とは何か」ということです。

  これから地域通貨の『5W・1H』すなわち、地域通貨の「目的」・「内容」・「担い手」・「実施時期」・「実施場所」・「実施手順」について考えて行きますが、まず地域通貨との関わりで「お金について知っておかなければならないこと」についてまず説明します。
  「私たちが毎日使っている通貨(お金)とは何か」という問いに対する一番分りやすい答えは「お金とは国民に対する国の借金証文」です(神奈川県選出の前自由党(現民主党)藤井衆議院議員の国会質問)。
  借金証文ですから「紙屑」になっては困るのです。ですからお金の発行と管理は、「国民から生命と財産の安全を委ねられた政府の最も重要な役割の1つ」とされ、治安維持と国防と同様に法律に基づいて厳格に執り行われています。
  わが国では紙幣は日本銀行によって、硬貨は財務省によって発行され、一般に「法貨」といわれています。
  通貨の発行と管理は行き着くところ@偽札と欺瞞行為の取締り、Aインフレの防止ということが出来るでしょう。
  第1次世界大戦のあとにドイツでものすごいインフレが起こって、1ドルが4兆2000億マルクになったという記録が残されています。
このことはマルク紙幣が紙くずになり、すべての国民が1文無しの貧乏人になったことを示しています。
「偽札を受け取ることは紙くずを受け取ること」ですから分りやすいことですが「インフレも通貨を紙くずにする」のです。
  地域通貨との関わりでまず第1に強調しなければならないことは「地域通貨を紙くずにしてはいけない」ということです。
  地域通貨は地域の仲間からの借金証文だからです。

  次は通貨の役割です。

  どんな本を読んでも、通貨は@交換手段、A価値の尺度、B価値保存という3つの役割を持っていると書かれています。
物々交換で物を売ることは容易ではありませんが、物とお金を交換する(売る)ことは簡単です。
  逆に物々交換で物を買うことは容易ではありませんが、お金と物を交換する(買う)ことは簡単です。
「交換手段」とはこのことを言っています。次は「価値の尺度」です。モノやサービスの値打ちは人それぞれによって違います。
同じ人の場合でも時と場合によって値打ちは変化します。
  ものやサービスを売る人、ものやサービスを買う人それぞれの立場で、「自分にとってどれだけの値打ち(価値)があるか」はお金の大きさで示されるというのがその意味です。
  ここまでは法貨でも地域通貨でも変わるところがありませんが、「価値の保存」という役割については大きな違いが出てきます。
「法貨は貯金をすると利子が付いて時とともに増えます」が、「地域通貨は貯金をすると目減りして、時とともに減ってしまう」ということになるからです。


  この点については地域通貨の歴史についての説明が必要です。

  地域通貨は1930年代の世界不況の時にオーストリアで生まれました。
人々の間でニーズがあるにもかかわらずデフレで経済が麻痺して33%もの人々が失業している現状を打開するために、ヴェルグルという町の町長が労働証明書を発行し、これを地域通貨として利用して地域経済を立て直したのがはじまりといわれています。  ヴェルグルでは見事に不況が克服されました。その理由は「労働証明書の有効期間が1ヵ月とされ、翌月に使用する場合は1シリング切手を貼付しなければならない」とされたためです。
  1000円分働いたという労働証明書を貯め込んで、1ヵ月後に使おうとすると100切手を貼らなくては使えないということであったと考えて下さい。
  1000円分のお金が1ヵ月後に900円になるのと同じです。このことは『マイナス10%の金利がつく』ということなのです。
人々は「急いで今月中に労働証明書を使おうとした」ために取引が活発化し、経済が動き出して、失業が減ったというわけです。
  この試みは経済の極端な沈滞を打開するカンフル注射としての役割を発揮しましたが、「通貨の発行は政府の専管事項で、町長が勝手にお金を作ることは認められない」という理由で廃止され、町は再び失業率30%の町に戻って行ったとされています。TN

2007−6−24  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗


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