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特集 テーマ  上野原の市民は何を目指すべきか
 研究提案 その3 光ファイバー計画の渦を流れに変えるために 
  第19講 光ファイバー事業における企業の役割
  第18講 『3方1両得』の先は『ユビキタス & パストラル ウエノハラ』
  第17講 『交通プロジェクト』:市民と行政へのメリット
  第16講 『交通プロジェクト』の提案と地権者へのメリット
  第15講 『情報プロジェクト』と『交通プロジェクト』の棲み分け

光ファイバー計画の渦を流れに変えるために (その5)

第19講   光ファイバー事業における企業の役割



  
流れに変える

  

 企業はクオリティーオブライフ向上の原動力

 私は上野原に新設された大学に着任する前は東レ株式会社本社の企画調査畑で一貫して仕事をして来ました。この会社は、1926年に無資源国日本でレーヨン糸を生産して外貨を獲得することを目的として三井物産によって設立されました(大量の硫酸と苛性ソーダーを使うその本社工場は京都・大阪の上水道の水源である琵琶湖畔の石山でした)。
 その当時レーヨン糸は画期的な新製品で、『Rayon』(光・オン=光点灯)という名前を与えられ、イギリスとアメリカで本格的に生産されていました。
 わが国では帝人が国産技術で生産をはじめていましたが、東レは高価なノウハウや特許を外国から買うと採算が取れなくなると判断して、生産設備をドイツから輸入し、主任技師をイタリアから招聘して、
日本人による『冒険的企業化』に踏み切ったのです(主任技師のために神戸まで毎日パンを買いに行ったと社史に書かれています)。企業は『エンタープライズ=冒険』と言われますが、まさに名前に相応しい第1歩であったと言えるでしょう。
 
 
東レはその後ナイロン・『テトロン』やポリエステルフィルム・プラスチックス・炭素繊維・インターフェロン・メガネ拭き『トレシー』・浄水器『トレビーノ』などなど科学技術の成果を事業化して、クオリティーオブライフ(生活の質)の向上への貢献と利益獲得を両立させて、世界各地で事業を行なっています。

 東レは黎明期にあった高分子化学、とくに合成繊維の分野で科学技術の最前線の成果を空気のように人々の生活に普及させた企業ですが、
ソニーも終戦直後に電子・通信機器の分野で『冒険的企業化』に成功し、科学技術の成果を事業化してクオリティーオブライフの向上に大きく貢献しています。
 

 企業について語る時、私たちの毎日の生活を本当に便利にしてくれているサービス業のヤマト運輸の『創業の志と決死的事業転換』を忘れてはなりません。
ヤマト運輸は1919年に創業され、『長距離は鉄道、短距離はトラック』という事業方針の下、トラックの持つ革新性(新橋から青山まで荷車で3時間のところを30分で鮮魚を輸送した)を生かして、関東大震災などの危機を乗り越えて発展しましたが、戦後の高度成長期に、創業当初の成功体験に縛られて高速道路網による長距離トラック輸送に出遅れて、会社存亡の危機に直面しました。
ヤマト運輸は、その時、NHKの『プロジェクトX』で取り上げられた通り、『商業物流から個人物流への決死的・大冒険的転換』によって成功を収め、自ら変身を遂げて人々のクオリティーオブライフの向上に貢献しました。
 
 
企業は社会への貢献と利益獲得を両立させる社会進歩の原動力です。

 企業家精神

 私はこの中で『ヤマト運輸の創業物語』は特別の意味を持っていると思っています。そのポイントは、
@ 実家の倒産によってサラリーマンになった創業者が若くして工場総監督に抜擢される
A それを快く思わなかった人々から『あいつは赤だ』(共産主義者だ)という噂を立てられて、会社を首にされる
B 「首にされるのは人の会社に勤めているからだ。ならば自分で会社を作ろう」と決心する
C 会社をはじめるにも資金がない。ならば10年がかりで10000円を貯めよう(物価指数で換算すると今のお金で約1650万円)
D そのために何をするか。知り合いが大八車を貸してくれるので引き八百屋をしよう
    という順序で、八百屋の行商をはじめたのです。

 折から、わが国では第1次世界大戦でドイツからの輸入が途絶え、空前の好況が続き、10年で1万円の計画が5年で達成されました。この1万円を手にしたちょうどその時『銀座通りは糞尿を垂れ流す牛車・馬車の通行を禁止する』という政府方針が出され、『自動車の時代到来を直感』して、アメリカフォード社からトラックを輸入して、トラック運送業を創業しました(『ヤマト運輸70年史』より)。日本にはまだ性能のよいトラックが出来ない時代で、アメリカから輸入したのです。

 私が特筆したいと思うのは『10年で1万円を蓄えようという志を見事に5年で実現した勤勉さ・実直さ』もさることながら『勤務先を首になったのは自分の会社ではないからだ。ならば自分で会社を興そうというプラス志向』です。
私は『新しいものごとをはじめる時に彷徨っている企業家精神』は、

@ この高い志・意思の強さと独立・自尊の精神
A 時代の先を読む先見性
B 社会への貢献と利益追求を両立させようという使命感であると確信しています。
 この精神は上野原の企業の創業物語にも共通している筈であります。
 

第18講で私は
 @ ユビキタス社会を先見して、上野原を活性化させる高い志と郷土愛が上野原に息づいていること、
 A この志をビジネスモデルに組み上げる企業家精神が上野原に健在であることを確信しましたと記していますが、

 『ユビキタス社会の幕開けを読む先見性』と『リスクを覚悟した上で、社会への貢献と利益獲得を両立させる企業家精神の中味』は東レ・ソニー・ヤマト運輸と同じであります。


 『来たりもの』の立場で、上野原の皆さんに是非分っていただきたいのは、生え抜きの地元の企業が地元の人々のために新しい分野を開拓していることです。企業活動の成果が首都圏へ吸い取られることなく地元に残って、次の発展の原動力になるからです。それだけにとどまらずに、情報基盤の確立は上野原の工業団地に首都圏から多くに企業を呼び込むきっかけとなり、上野原の繁栄を生み出すからであります。

 企業が直面するリスク

 
今、私は『リスクを覚悟した上で』と書きましたが、このことについて説明します。事業家が事業をはじめる時には次の手順を辿ります。

@ 資本調達:『自分で稼いだお金』(ヤマト運輸の歴史が見事に説明している)と『自分を担保に借りたお金』(『ベニスの商人』の有名な話)
A 事業に必要な土地建物・設備機械・原材料の調達と従業員の採用
B 社会が必要とすると自分が判断したグッズとサービスの生産
C 生産したグッズとサービスの販売
D 企業を通じて生計を維持している人々への成果の配分

 
このプロセスを経済学は『G−W−G’』(『G=ドイツ語のゲルト=お金』 が企業活動の中で 『W=ヴァーレン=もの 』に姿を変え、販売されて再び『G’=お金』に戻る)と説明しています。この表現で@〜Bの 『G−W』 は実線でつながっています。この3つのプロセスは『志をもつ企業家の意志に基づく業務命令によって実行される』ので100%実現するという意味です。

 これに対してCのプロセスについて、経済学の本は『W−G’』と実線で繋いいだ上 『G’−G』という引き算の結果がゼロより大きくなって『企業家は儲ける』と説明していますが、私は『W…G’』と点線で繋いで説明しています。販売されるグッズとサービスは『社会が必要とするから売れると判断したのは企業家』であって、買う立場にいる『カストマーではない』からであります。『買え』と命令されて『はい』と言って買うのは常にもの不足であった共産主義計画経済の下に置かれていた『独裁者によって奴隷化された人民』のなせる業で、民主主義下の自由市場経済のカストマー(顧客)のすることではありません。自由社会で企業家が『買え』と命令しようものなら反抗されて売れるものまで売れなくなってしまうでしょう。

 難しいことは、企業家は『社会のために良かれと思って、自分で稼いだお金と自分を担保に借りたお金を注ぎ込んでグッズとサービスを生産するが、それが売れるとは限らない。悪くすれば『G’−G』の引き算がゼロより小さくなって企業家は損をする』ということです。これが『リスク』です。企業家にとってとくに厄介なことは、はじめは首尾よくことが運んでも、周囲の状況が変わればあっという間に事態が逆転するということです。ヤマト運輸の宅急便への転換が何よりの証拠です。

 かつて栄えた上野原の繊維会社が金属・プラスチック加工その他の分野に転進して今に生き残って、繁栄の道を歩んでおられるのは上野原に企業化精神が息づいている証拠であると私は思っています。

 上野原ブロードバンドコミュニケーションズ(UBC)

 
私が上野原市の光ファイバー事業構想に接したのは昨年2月に行われた市政報告会の席でした。1年半前の説明の概要を私のメモから拾い出すと次の通りです。
@ 上野原市が光ファイバー幹線を市の施設として敷設し、民間に貸与する。 10000軒を対象としたこの事業は日本で未だ行なわれていない。これは上野原市が「光ファイバーネットワーク関連産業集積」へ展開する突破口になり得る。
A 株式会社UBCが設立されている。追って市も出資し、第3セクターになる。
B 光ファイバーネットワークには次の利点がある。
@] 電気を使わないので故障がない
A] 最高速・双方向通信
B] 光ケーブルは雑音を拾わない(銅線同軸ケーブルはアンテナの機能を持つためモーターの回転に伴う雑音を拾い、通信能力を低下させる)
C 光ファイバーによってサービスが向上する
@] TVがよく映る(UBC提供のプランによるとアナログTVでデジタル放送が受けられる)
A] IP電話が使える
B] 福祉・防災・行政・防犯などのサービスが向上する
C] 衛星画像・ライブカメラ画像が配信される
D] 医療・在宅ケアが可能になる
E] IP告知端末を使ってTVでインターネットサービスを受けることが出来る
D 上野原の居住者へのメリット
@] 市が敷設したネットワークを安く借り、100メガで月額3500円と言う世界最安値の通信サービスを受けられる
A] デジタル電波は東京タワーから秋山へ57.7キロをストレートに飛んでくる。山梨県の三つ峠基地の85.6キロより電波状態がよい

 上野原をよくするために必要な情報プロジェクトはNTTなどの企業努力に俟たざるを得ないと考えていた私にとって、正直、この話は『晴天の霹靂』で、一刻も早い具体化を期待したのでしたが、私にとって満塁ホームランと思えるこの計画が渦に巻き込まれている現状を知って心を痛めていた次第です。

 
 第15講で私は渦の原因について「上野原に15年しか住んでいない私には、その深奥にどのような公的理由(コモンコーズ)があるのか、理解できない部分がある」と記していますが、『ユビキタス社会の幕開けを読む先見性と、リスクを覚悟した上で社会への貢献と利益獲得を両立させようとするUBCの企業魂』に対抗し得るコモンコーズを私は渦のエネルギーの中に見出すことが出来ません。

 UBCの事業について、ただ1点心配な点があります。それは事業に含まれているリスクがどれくらい大きいのか、あるいは、どれくらい小さいのかという問題です。リスクをどのように評価し、覚悟するか、これは企業家の度量の問題で、1人のカストマーの立場では知る由もなく、心配する事柄でもありません。私は1市民=1カストマーとして『注意深い楽観論の立場からUBCのサービスを受けるかどうかを決める』のが望まれる態度と考えています。『当初の目的が正しい方向で設定されている場合、事態が進展する中で発生してくる問題点は目的の正しさの故に発展的に解消される』というのが注意深い楽観論の立場に立つ私の結論です。

 最後に、私は『合併特例債を活用して光ファイバー事業を着想したミスターXの頭脳』に拍手を送ります。このX氏が誰か、私は詳細を知る立場にいませんが、私の心の鏡には『ミスターXは上野原の福の神』のように映っています。

 私はサイレントマジョリティー(良識を持って沈黙を守っておられる多くの有権者)のみなさま方と共に光ファイバー計画を遅延させている渦が1日も早く解消に向かうことを期待すると申し述べて、本稿を閉じます。(完)


2007−09−02  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗



 光ファイバー計画の渦を流れに変えるために (その4)
第18講   『3方1両得』の先は『ユビキタス & パストラル ウエノハラ』

 『さらに大きな効果』を実現するために

 『光ファイバー計画の渦を流れに変える提案』で私が最も強く期待することは、光ファイバーによる上野原市の情報基盤整備事業を遅らせようとしている人々がそのエネルギーを交通プロジェクトに振り向けて、情報プロジェクトと交通プロジェクトが切磋琢磨する『プロジェクト間競争』が行われることであります。

  競争の根底には闘争があります。闘争が『決闘』という形をとる場合には命を落とすことも起こり得ます。しかしながら現代社会ではスポーツやビジネスがそうであるように、当事者はルール(法と規則)に従ってフェアプレーの精神をもって競争し、勝敗を審判の判定に委ねるという形で『闘争は合理化』されています。国家権力をめぐる政争においてすら『闘争は合理化』され、アメリカの大統領選挙では敗者は敗北宣言を行い、潔く敗戦を認めます。

     上野原にとって一番大事なことは

@ 日常生活をよくするための『情報プロジェクト』と『交通プロジェクト』の間で生活の質(クォリティーオブライフ)の向上を競うフェアな競争が行われること、
A 競争の成果の判定は市民1人1人の投票に委ねられること、
B 投票に当たって市民は自分の利害に直結する『上野原地方区』を越えて『上野原全国区』の立場、すなわち上野原全体のクオリティーオブライフの向上に寄与しているかどうかを判定の基準として自分の1票を投じること、
C 敗者は潔く勝敗を認め、次の選挙まで小異を捨てて大同に就くこと
            であります。

   市民の1票は『税金の使い方を委ねる4年に1度の審判の1票』です。『頼まれたから投票する』のではなく、『口先で奇麗ごとを言う人に惹かれて衝動的に投票する』のでもなく、『◎◎です。がんばります! という連呼の回数を基準にして投票するのでもなく』、

 『@構想力、 A誠のこころ(言ったことを成し遂げるこころ)、 B実績、 C実行力、 D使命感を併せ持っている人を自分の心の鏡に照らして見極めて1票を投じること』であります。
その後に開けて来る上野原のイメージは『ユビキタス & パストラル ウエノハラ』です。

  『ユビキタス ウエノハラ』−『3方1両得』の先に広がる世界:その1

 上野原市の情報プロジェクトが完成した後に広がってくる世界は『ユビキタス ウエノハラ』であります。
『ユビキタス』という言葉は聞き慣れないカタカナですが、「アメリカ ゼロックス 社の故マーク ワイザー 博士が『空気のようにいつでもどこにでもコンピューターがある社会』を構想して、『神様がいたるところに存在する』という意味のラテン語に託して『UBIQUITOUS』と表現したのがはじまりである。 その意味は、日本語では『時空自在』、中国語では『無所不定』である」とインターネットで説明されていますが、私はアメリカ生まれのものの見方・考え方ですからカタカナで『ユビキタス』という表現を用いることにします。


 『ユビキタス』という言葉が表現している実体は果たして何なのか。私は次のように考えると分りやすいと思います。

 私の子供たちの学力が『偏差値』という統計用語で測られるようになった時、私はしばらくこのことの本質を理解することができませんでした。私にとって『偏差値はクラスという集団の特性を分析するために考案された統計分析の道具』だったからです。「集団全体を分析するための統計手法がなぜ集団を構成する1人1人の子供の成績を位置づける道具になるのか」という点が理解できなかったのです。


 その当時私が気づいたことは、「筆算とそろばんとタイガー計算機と計算尺と数表で計算していた時代にコンピューターの計算機能が空気のように身の回りに浸透してきて来ている」(昨今の言葉で言う『ユビキタス』になっている)ということでした。その結果、集団が1000人であろうと10000人であろうと、手計算では厄介この上なかった標準偏差の計算がいとも簡単にできるようになり、その計算結果を用いて10000人もの集団を構成する1人1人の集団における位置づけを決めることが出来るようになったということです。

 このことは『不特定多数』というものの見方・考え方が『特定多数』というものの見方・考え方に取って代わられたことを意味します。このことは私の身の回りでコンピューターによって社会が変わりはじめた最初の出来事と言ってよいでしょう。

 『コンピューターの計算機能』が空気のように日常生活に入り込んできた結果、市民社会は『特定多数型社会』に変化しました。その意味は
これまでの社会は『不特定多数型社会』、『すなわち、社会を構成する1人1人を特定できないために集団としてひとまとめに扱われる社会』であったのに対して、ユビキタス社会では『特定多数型社会』すなわち『1人1人が1人ずつ個別に扱われる社会』になったということが出来るでしょう。

 光ファイバー計画が完成したときに実現する
『ユビキタス ウエノハラ』の市民生活の係わりで言えば、市の広報誌『うえのはら』はこれまで通り『市役所⇒区長⇒副区長⇒組長⇒個々の家庭』という『ピラミッド型の一方通行的縦型情報伝達社会』の手順で配られるが、生活に直轄する健康診断のお知らせなどは毎月1回ではなく、その都度『市役所⇔個々の家庭』という『横1列型の双方向的情報伝達社会』の手順で、高速(光速)で的確に伝えられるように変るということです。

 そのために欠かすことの出来ない道具が各家庭にUBCが配置する『告知端末』と呼ばれるボックスということになります。

(閑話休題:私は上野原情報基盤整備事業では『告知端末』という言葉を使うのは止めにして、その代わりに『情報ターミナル』という言葉を使うことを提案したいと思います。
 
『告知端末』は英語では『ノーティス ターミナル』といわれます。『ターミナル』という言葉は厳密には『終点』を意味しますが、私たちは『バスターミナル』という言葉を『バスの終着地点であると同時に発車地点である』という意味で使っています。
告知端末は情報の到着地点であり、同時に返信の発信地点でもあるわけですから、バスの発着ターミナルと同じような意味で『情報ターミナル』という表現が分りやすいと私は考えます。『告知』という言葉でまず私の頭に浮かぶのは『生命保険の告知=白状』です。全く賛成できない理由です)。

 これによって『どのようなメリットとデメリットが市民生活の上で出てくるのか』が重要な点ですが、行政との関係で言えばさしあたり『安心・安全でより一層快適な市民生活のための情報、とりわけ防災情報の適時・的確な双方向通信』ということになるでしょう。
 
私はそれだけではなく、民生一般について「その昔、口頭でのコミュニケーションによって隣近所だけで行われていた『SOS=助けて欲しい』・『了解』という情報のやり取りが告知端末(情報ターミナル)を通して上野原市の中山間地の隅々にまで行きわたること」だと思っています(詳細はこのシリーズの自家用車乗り合い・乗せ合いプログラムに記しています)。

 『パストラル ウエノハラ』−『3方1両得』の先に広がる世界:その2

 私はこの投稿をはじめた第1講で「首都圏のアスファルトジャングルで30数年生活してきた私の目から見た結論は『上野原はすばらしい田園都市』(パストラルタウン)ということです。
 このすばらしさは『河岸段丘』が作り出す『風の幸』から生まれています。
 これまでは「上野原は河岸段丘だから、坂が多く、道は狭く、住みにくいことこの上なし」ということだったのですが、『風の幸』は関東平野の首都圏にはありません。
 『風の幸』とは『風が通るから花がきれいで、野菜がおいしくて、卵がおいしくて、人々が長生きできていること』と私は思っています」と記しています。

  このような上野原が実現するためには情報プロジェクトと交通プロジェクトが車の両輪となって機能することがどうしても必要ですが、私の言う2つのプロジェクトが実現した場合には、『河岸段丘だから住みにくい上野原に大逆転が起こって、河岸段丘だから住みやすい田園都市=パストラルウエノハラが実現する』のであります。

 ユビキタス社会への志とビジネスモデル:

 私は先に『コンピューターの計算機能』という表現を用いましたが、計算機能はコンピューターの機能の一部に過ぎません。
『ダータ フェアアルバイトゥング マシーネ』。これはコンピューターのドイツ語です。『データー加工機械』という表現です。
預金も貯金も送金もみんな『データー加工』であります。近くに郵便局や金融機関がない上野原の中山間地でこそ自宅のコンピューターを使って送金したり、入金を確認したりできるようになるのです。
 
コンピューターの持つ種々さまざまなデーター加工機能が市民生活にどのような便利さをもたらすか、メール・金融・教育・医療などなど1つ1つ具体的に研究して、その確かな便利さを毎日の生活に生かすことが出来るようになるのです。

 私は上野原で「助け合いの仕組みが必要である」と考えて『自家用車に便乗させてもらって、ありがとうの気持ちを地域通貨で支払う』という構想を提案しましたが、私はそのために必要な情報プロジェクトはNTTなどの企業努力に俟たざるを得ないと考えていました。
携帯電話の場合がそうであったように、光ファイバーネットワークが企業採算の合う範囲で少しずつ整備され、世の中が穏歩前進のペースで便利になって行くのが精一杯と考えていたのです。


 しかしながら上野原では、「それでは駄目だ。世の中の変化のスピードが速く、それでは上野原の中心市街地だけが近い将来ユビキタス社会の恩恵を受けて生き残ることが出来ても、西原や秋山の奥地は情け容赦のない少子化・高齢化の流れの中で壊滅してしまう。
『市場メカニズムに仕組まれている穏歩前進』に頼っていたのでは上野原の僻地の社会は壊れてしまう。
情報基盤整備事業を立ち上げて上野原の郷土を崩壊から守らなければならない。
折から、上野原町と秋山村との合併によって合併特例債という『想定外の多額で大変有利な財源』が与えられる。
 これを上野原の将来のために投資しよう。投資案件は在来型公共投資による道路・橋梁・トンネル・建築物などのインフラではなく、情報インフラに投資することが上野原100年の計である」という構想
が上野原に生まれていたのであります。

 私がこの構想をはじめて知ったのは平成18年2月に行われた市政報告会でした。
この時私は『ユビキタス社会を先見して、
  @ 上野原を活性化させる高い志と郷土愛が上野原に息づいていること、
  A この志をビジネスモデルに組み上げる企業家精神が上野原に健在であること』を確信しました。
(つづく)TN


2007−08−26  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗


 光ファイバー計画の渦を流れに変えるために (その3)
第17講   交通プロジェクト』:市民と行政へのメリット


  前回私は『交通プロジェクト(トンネルと上野原駅南口開発)のプロトタイプからが生まれる地権者のメリット』として、次の5点を指摘しました。

@  先祖伝来の土地を手放すことがない、
A  区分所有により所有権が分数化されるため、子々孫々に合理的に分割・継承される
B  分数化された所有権はマンションと同様売買可能である
C  地面の表面の『月極めの貸駐車場』あるいは『時間貸し駐車場』としての利用を「JR上野原駅南口ターミナル運営機構(仮称)」に委託する場合、空中利用権の賃貸と合わせた現金収入の確保が可能である
D  この現金収入を借金返済の財源として新たな土地を購入できる

 このプロトタイプによる市民のメリット :次は市民にとってのメリットです。まずトンネルのメリットです。

 トンネルが完成した時に予想される市民のみなさんへのメリット:

@  人々が買い物に出かける時間帯に10分間に20台近くの大型車輌が道幅一杯にすれ違う事態がなくなり、交通安全と商店街の活性化が期待できる、
          目抜きの国道20号線の商店街を往来する車輌の動向 
A  週末の歩行者天国も、将来、夢でなくなる、
B  上野原の商店街を通り抜ける際に通過する距離が4100メートルから1600メートルに60%も減少するだけでなく、信号が8ヵ所から桂川橋のたもとの1ヵ所に減少する、
C  東京方面と大月方面から商店街を通り抜ける際に生じる坂の上り下りがなくなり、排気ガスの減少が期待される(上野原市は環境宣言都市になっている)、
D  商店街にお住まいの人たちが寝静まっている時間帯に国道20号線に面した家屋の軒先を10分間に40台近くの大型車輌が時速60キロのスピードで行き来することがなくなる、
E  河沿いの県道を桂川橋のたもとの交番から河川敷を通って先へ延長して、トンネルに繋ぎ、トンネルの手前から諏訪へ抜ける市道を分岐させて諏訪地区にすでに完成している2車線の市道に繋ぐと上野原に東京の山手線のような環状道路が完成する、

  このトンネルは市道ではなく県道として建設されると私は承知していますが、地元選出の石井県会議員の強力な推進活動に期待しています。

 次にJR南口駅開発が実現した時の市民のみなさまへのメリット:

@  南口からJR上野原駅を利用する場合、エスカレーター・エレベーターによって合計117段の階段の上り下りから開放される
A  時間貸し駐車場に車を停めてJRで八王子や新宿に行くことができ、地球温暖化防止に参加するライフスタイルで生活できる、
B  2階部分にバスターミナルが完成することによって上野原のバス路線が一新される、上野原の公共交通が一新される、
C  このバスターミナルに託児所などなどこれからの男女共同参画社会に必要ないろいろな都市機能が集中してきて、上野原の生活の質は見違えるようによくなる、
D  私は詳細を承知していませんが、南口開発に予定されている28億円の合併特例債のうち土地買収の費用が使われずに済むことになり、その分の合併特例債を市民生活の向上のために有効活用できる

 このプロトタイプによる行政へのメリット

  最後に行政にとってのメリットとして次の3点が考えられます。

@  光ファーバー計画をめぐる渦が解消し、上野原を住みよくするための「満塁ホームラン」と評価される計画が前進する
A  土地買収に必要な合併特例債を南口開発に必要な他のプロジェクトに振り向けることが出来る
B  都市計画を作成し、土地買収を進める際に予想される膨大な時間と労力が必要なくなり、行政の能率が向上する

 交通プロジェクト」始動に必要な絶対条件

 地権者と一般市民と行政の3者にこれだけ大きなメリットをもたらすこのJR上野原駅南口開発プロジェクトについて、前回、私は「知っていること8項目」を記しましたが、その中で「土地の所有権は憲法が定めている絶対的権利であって、所有権に影響を与えるような決定を全員一致から多数決に変更することは許されない」と記しています。これは、構造改革特区について内閣府の担当官と会話した際に半ば冗談半分に交わした会話ですが、このことは土地区画整理事業で『全員一致の表決に参加されない地権者の全員一致の表決への参加』が絶対条件であることを意味しています(日本は共産党独裁の国家ではありませんから一方的に土地を接収されることはなく、地権者の権利はしっかりと保護されています)。

 一方で私が知っていることの中には『事態が膠着している原因』は含まれておりません。私は事態膠着の原因を知らないし、その原因を知ることは本件「交通プロジェクト」始動に必要な絶対条件ではないと考えるからであります。

 私が考える『交通プロジェクト始動の絶対条件』とは『憲法で定められた土地の絶対的所有権と 公 の係わり』についての地権者の理解と協力です。その中味は、

@  私的な立場で地権者に経済的な不利益がなく、否、むしろ経済的な利益が増進される枠組みの下で、
A  地権者の土地が公=パブリックの利益の増進に寄与する場合には、
B  『1個人のプライベートな立場から生まれてくる私的な判断』だけでなく『1個人のパブリックな立場から生まれてくる公的な判断を優先させて頂きたい』
     ということです。

 第9講で卒業論文指導についての私の考え方を述べた際の図式を用いてこの関係を整理すると次のようになります。 
 社会=パブリック



B
C
@ 自分に不利・社会にも不利=現状膠着
A 自分に有利・社会には不利=自己リスク事業
B 自分に不利・社会には有利=法に基づく強制収用(圏央道をめぐる土地の強制収用など)
C 自分に有利・社会にも有利=自利利他円満⇒合意による前進(南口開発のビジネスモデル)
@
A

不利   有利
自分=プライベート


 
ここまで書き進んできたところで、私は『南口開発が膠着しているのはパブリックな利益を阻止しようとする動機に基づくとは考えられない。ならば、そこには何かプライベートな不一致があるに違いない。この不一致の解決を裁判という通常の手段で解決するのではなく、不確かな年金記録を社会的公平確保の観点から確かであると判定する年金判定特別委員会のような公的判断の仕組みを上野原に作ってその判定に委ねる』ことが出来るのではないかと思い至っています。

 その理由は

@  南口開発は出発点においては全員一致でスタートしていること、
A  『土地の区分所有方式によって自利利他円満型合意による前進が可能な案件』であること、
B  裁判という通常の手続きで当事者間の主張を裁定するにはあまりにも時間のロスが大きいと考えられること
C  目を未来に向けて利害の調整を図ることができること
   がその理由です。さらに言えば、
D  地権者の中で全体をまとめるためならば個人的な不利益が多少あっても構わないという立場に立たれる方がいらっしゃること
 が判明すれば南口開発についての全員一致の合意は可能であるに違いありません。

 『さらに大きな効果』を実現するために

 
この提案で私が最も強く期待することは、上野原に渦巻いている「上野原の市民生活の質を向上させる行政のプロジェクトを反対側から足を引っ張る綱引き構造」が解消し、「市民生活の質を向上させる複数のプロジェクトが互いに競争し合って『生活の質の向上』を目指して切磋琢磨する構造」が生まれることです。(つづく)

  追記:ここで述べてきた『交通プロジェクト』は『谷口ウエノハラ研究室』の公開研究テーマであります。この件についての私の考え方と構造改革特区提案については『帝京科学大学紀要』または上野原インフォメーションのホームページに『ヤドカリ』している『谷口ウエノハラ研究室』のホームページに掲出されています。

 私の交通プロジェクト具体化に必要な予算は『情報プロジェクト』の予算をはるかに上回ります。そして、そのプロジェクトを『オールウエノハラ共同企業体』で実行すればよいのであります。関係各位の真剣なご検討とご意見を頂きますようお願いします。TN


2007−08−18  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗



 光ファイバー計画の渦を流れに変えるために (その2)
第16講  『交通プロジェクト』の提案と地権者へのメリット




盛土以前の土地の境界線のイメージサンプル

 『上野原の市民は何を目指すべきか』という上野原インフォメーションの問いかけに応えて私が投稿している目的は、

「その昔、口頭でのコミュニケーションによって隣近所だけで行われていた助け合いの仕組みをインターネットのソーシアルネットワークシステムを使って上野原市の中山間地の隅々にまで行き渡らせて、上野原を首都圏に一番近い健康で長生きできる田園都市に大逆転させ、少子化・高齢化で崩壊しつつある上野原市の中山間地域に元気を取り戻すこと」

であります。上野原市の人々が力をあわせて3年〜5年後にこの大逆転に成功すれば、首都圏から年金生活世代の人々が上野原に移り住んで来て、上野原の人口が増加に転じることも夢ではないと私は考えています。

そのためには2つの活動すなわち

@ 市の光ファイバー事業を活用した『SOS=助けて欲しい』・『了解=助けに行く』という情報伝達が早く・正確に行われる仕組みを作る活動=『情報プロジェクト』
A 道路と車輌を使う『お助け活動』が適時・的確に行われる仕組みを作る活動=『交通プロジェクト』

がどうしても必要なのですが、『情報プロジェクト』を渦に巻き込んで停滞させているエネルギーを『交通プロジェクト』に転換するように誘導して、光ファイバー事業を早期に完成させる方策を提案いたしました。

  
今回、私は『交通プロジェクト』の具体的内容を記します。

 それは次の2点です
@ 上野原に大学が出来たときに作られた川沿いの県道を藤野に向かって川沿いに延長し、上野原郵便局本局の前を通る県道の下にトンネルを掘って国道20号に繋ぐ
A JR上野原駅南口を『土地買収による従来型の開発ではなく、マンションの区分所有の考え方を取り入れて開発する』ことによって、合併特例債の有効活用と折衝に必要な膨大な時間と労力を節約し、『地権者・行政・市民の3方1両得』を実現する

「このプロジェクトが完成した時に地権者・行政・市民の3方にどのような『得』が生まれて、上野原がどれだけ住みよくなるか」については後で述べることとして、まず、私のコンセプトに基づく私のプロトタイプ(案)を記すことにいたします。

 トンネルプロジェクト
:私が大学に着任して間もない頃に25000分の1の地図で概観したところでは、長さが約400メートルのトンネルを掘ることは、勾配の面からも実現可能です。私はこの考えを国道20号線の交通実態調査の結果と合わせて平成13年8月に「『街づくり』今、何が必要か」というシンポジウムで発表しています(提案から6年の歳月が経過しています)。

 JR上野原駅南口開発
:極めて難しいのはJR上野原駅南口開発です。私が承知していることは、

@ 桂川の水源は富士五湖で、広範囲に上流で大雨が降った際に下流の相模川の洪水を防ぐために上野原の川下にあるダムが放水を抑える関係で、南口一帯がしばしば冠水したこと、
A 冠水を避けるためにはじめられた土地区画整理事業(南口開発)は『全員一致でなければ何事も決められない』という仕組みの下で着手されたこと、
B 冠水を防ぐために3メートルほどの盛土が行なわれたこと
C その結果、盛土以前の土地の境界線が消えてしまったこと、
D 盛土後に線引きされた新しい境界線について全員の賛成が得られなかったために『何事も決められない事態』が発生し、私が上野原に住みはじめたこの15年間、膠着した事態が続き、打開の目途が見えないこと
E 膠着した事態を早急に打開しようとして南口開発の仕組みを「全員一致による採決から多数決原理による採決に変更しようとしても、土地の所有権は日本国憲法によって絶対的権利と定められているために革命を起こして憲法を改正しない限り不可能である」こと
現在の憲法と法と規則のもとで合法的に開発を進めるには「行政が公共目的を理由に都市計画を決定し、地権者の土地に適正な補償措置を講じて土地を収用する」こと
G そのためにはさらに20年、否、30年の歳月が必要とされそうなこと
であります。

 私は、平成15年9月に上野原駅乗降客実態調査を行いました。その結果、

@ ウイークデーには1932名が南口を利用されていること、
A ウイークエンドでも1135名が南口を利用されていること、
B 上野原駅の利用者の4人に1人が「南口からプラットホームまで86段の階段を上り、31段の階段を下る」という難儀を耐え忍んでおられること
を知りました。

 この調査の後、私は『上野原の人々に係わるものごとを、上野原の人々の手によって、上野原の人々のために』何とかできないかと真剣に考えるようになり、
マンションに認められている『区分所有』という考え方を『南口土地区画整理事業に適用する』という考え方にたどり着きました。すぐに分ったことは「区分所有という考え方はマンションにだけ認められている所有権で、土地には適用されない」ということでした。

 私は「そのまま引き下がったのでは膠着した事態の打開は不可能」と考え、小泉内閣の構造改革特区に「土地にも区分所有を認める提案」を行いました。農林水産省からの回答は「法に定めがないために却下」(案件番号農林水産省1020230 C)ということでしたが、法務省からは「現行法規のもとで実施可能」(案件番号法務省0520140 D)という回答が届きました。私は法を司る法務省の判断を得ていますので、区分所有は実現可能と確信しています。以下はこの私のコンセプトを形にした私のプロトタイプ案です。

 土地の区分所有によるJR上野原駅開発のプロトタイプ案

1) 土地整理事業に参加されたすべての地権者の盛土以前の所有関係に基づく登記面積(イメージサンプル参照)の合計を1棟の高層マンションに見立てて10000と表示し、それぞれの地権者の登記面積を10000を分母とした分数で表示する、
2) 対象地域の地権者を
@ 独自に調達する資金で盛土後の地面とその空間を独自の利用計画に基づいて利用するグループ
A 盛土後の地面の表面を引き続き駐車場として利用する権利と空間をバスターミナルや時間貸しの公共駐車場として利用する権利を新たに設けられる「JR上野原駅南口ターミナル運営機構(仮称:NPO法人を想定)」に『永久賃貸』して賃貸料を永久に受け取るグループ
に分ける
3) 上記2)−@の「独自利用グループ」の地籍を桂川沿いの道路側の盛土後の土地に集約する
4) 上記2)−Aの「地面の表面を駐車場として利用する権利と空間の利用権を運営機構に永久賃貸するグループ」はそれぞれの地籍に応じて割り当てられる駐車区画の運営を「JR上野原駅南口ターミナル運営機構」に委託し、駐車場として利用する権利と空中利用権の永久賃貸収入を受け取る(『駐車区画の運営委託』は盛土後に割り当てられる駐車区画の位置を巡る利害関係を克服するために不可欠であると同時に駐車場の草1本抜く手間暇をかけることなく現金収入が得られる点で合理的であると考えられる)。

 このプロトタイプによる地権者のメリット

@ 先祖伝来の土地を手放すことがない、
A 区分所有により所有権が分数化されるため、子々孫々に合理的に分割・継承される
B 分数化された所有権はマンションと同様売買可能である
C 地面の表面の『月極めの貸駐車場』あるいは『時間貸し駐車場』としての利用を「JR上野原駅南口ターミナル運営機構(仮称)」に委託する場合、空中利用権の賃貸と合わせた現金収入の確保が可能である
D この現金収入を担保に借入を行い、新たに土地を購入できる

  予想される市民にとってのメリットと行政にとってのメリットについては次回に考えを述べることといたします。TN


2007−08−12  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗



 光ファイバー計画の渦を流れに変えるために (その1)
第15講   『情報プロジェクト』と『交通プロジェクト』の棲み分け


 今年3月に帝京科学大学での15年の勤務を終えて『谷口ウエノハラ研究室』を開設、4月23日から「上野原の市民は何を目指すべきか」という上野原インフォメーションから投げかけられた課題に所信を投稿しはじめて4ヵ月目を迎えています。

 @ 最初の3回は『社会の動き方・動かし方についての基本的考え方』を、
 A   4回から第8回までは『インターネット社会のソーシャルネットワーキングシステムを活用した助け合い社会創設の提案』を、
 B 第9回から第14回までは『助けてもらってありがとう』の気持ちを表す『地域通貨創設の提案』を投稿しました。


 
その目的は『上野原の実情に即した助け合いの仕組みを上野原市の隅々にまで作る』ことによって、道が狭く、坂が多いという河岸段丘独特の地形のゆえに住みにくかった『上野原を住みやすく、健康で長生きできる田園都市に大逆転させること』です。

 その実現のために次の2つの条件が必要です。

 
@   『SOS=助けて欲しい』・『了解=助けに行く』という情報伝達が早く・正確に行われる仕組みを作ること
 A   道路と車輌を使う『お助け活動』が適時・的確に行われる仕組みを作ること


 第13講で、私は上記第1の『SOS』・『了解』という情報伝達の仕組みは市の光ファイバー計画によって、通信情報インフラが上野原の一番奥まった集落にも完備される日が近いので、次は消防車や救急車による緊急出動ではなく、『日常生活の中でのちょっとしたお助け活動』が円滑に行われるための『交通輸送=人の移動』の仕組みという第2の課題について、『大動脈・小動脈・毛細血管』のレベルに分けて私の考えを述べると書きましたが、
『テレビや災害無線放送もさることながら、上野原市の隅々にまで行き渡った助け合い社会実現のための満塁ホームラン』と思われる上野原市の光ファイバー計画が『渦に巻き込まれて予定通り進んでいない』ことを知って、心を痛めています。

  
  
今回、急遽予定を変更して、『上野原市の光ファイバー計画を遅延させている渦を流れに変えるにはどうすればよいか』について私の考えを述べることにいたします。

 上野原に15年しか住んでいない私には、その深奥にどのような公的理由(コモンコーズ)があるのか、理解できない部分がありますが、大学勤務の15年間に『上空10000メートルに設置した私の論理と判断の鏡』によって鳥瞰した『上野原のあるべき姿』とこの4月以降に谷口ウエノハラ研究室で学びはじめた『地上300メートルから目視した上野原の現実』を重ね合せながら『市の光ファイバー計画の渦を流れに変えるための方策』について考えを述べます。

 
その基本コンセプトは「上記第1の情報=インフォメーションの仕組みの構築をめぐって渦を巻き起こしているエネルギーを上記第2の交通輸送=トランスポーテーションの仕組みの推進エネルギーに組み込んで、上野原の助け合い社会の完成に必要な2つの条件を一気に満たす」ということであります。

 まず、上空10000メートルから鳥瞰して『市の光ファイバー計画が満塁ホームランと考える理由』を述べます。
 それは
『西原や秋山など上野原の中山間地の一軒一軒を残らず光ファイバーでつなぐことは、利益を企業活動の効率の指標とする民間企業では不可能だ』ということです。

 「夏休みに遊びに行きたくても携帯電話が通じないところには遊びに行かないと都会に住んでいる孫たちが言う」そんな地域が携帯電話が普及しはじめてから10年余になるというのに、西原や秋山などに残されているのがその何よりの証拠だと私は考えています。

 光ファイバーを民間企業に任せておけばよいという考えは「市場原理に任せればよい。その結果勝ち組と負け組みが出るのは当たり前で、孫たちに遊びに来て欲しければ街に転居すればよい」というのと全く同じではありませんか。
 これは『上空10000メートルに設置した私の論理と判断の鏡』には『強者の論理』と映ります。
 市の光ファイバー計画は、テレビや防災無線もさることながら、新しい技術を活用して上野原の市民から発せられる『SOS』を受信し、『了解』と返答する『高速(光速)で正確な情報毛細血管』であります。
 西原や秋山の中山間地のすべてに携帯電話が通じるより先に光ファイバーが張り巡らされて、お住まいの地域から『SOS』が発信できることは、情報技術によって上野原の『クォリティーオブライフ』(生活の品質)に『大逆転を生み出す第1の条件』が整うことを意味します。

 しかしながら第1条件が整っただけでは
『上野原の実情に即した助け合いの仕組み』は完成しません。『情報=インフォメーションの第1条件』と『交通輸送=トランスポーテーション』の第2条件は『掛け算でつながっている』からです。第2の条件がゼロであれば第1条件が100%完成しても全体はゼロだからであります。

 人それぞれの立場で譲れない理由があることはよくあることですが、『上野原の人々の生活にかかわる事柄を、上野原の人々の手によって、上野原の人々のために』という渦を巻き起こしたエネルギーの原点に立ち返って、市の光ファイバー事業を巡って展開されている『綱引きのための貴重な時間とエネルギー』をお助け社会実現を促進するエネルギーに転換して頂いて、私が『上空10000メートルから鳥瞰した上野原のあるべき姿』を実現する上でどうしても必要な『交通輸送=トランスポーテーション』という第2条件の推進に取り組んで頂けないものでしょうか(時間は私の頭の中では『取り返すことが出来ない資源』(Unrenewable Resorces)ということになっています。これはすべての人々に当てはまる『公理』と思っています)。

 私の光ファイバー事業についての理解は一般市民として得た情報の域を出ていませんが、
光ファイバーの意味と効果については防災無線と地上デジタル放送もさることながら『その昔、口頭でのコミュニケーションによって隣近所だけで行われていた助け合いの仕組みを上野原市の中山間地の隅々にまで広げて、上野原を首都圏に一番近い健康で長生きできる田園都市に大逆転させる重要な計画』であり、その実現に当たって特に咎め立てしなければならない要素はないと私は考えています。

 私が得ていた情報は

平成15年の春から初夏にかけて26の地区で行われた地域住民懇話会で『秋山村との合併によって国が70%を肩代わりしてくれる合併特例債が利用できるメリット』が強調されたこと、
その後合併が実現して所定の行政の手続きを経て合併特例債を活用した事業が計画・決定されたこと、
その中に光ファイバー設置事業が組み込まれたこと
C この光ファイバー計画のコンセプトが誰の頭脳によって着想(コンシーブ)されたのかを知ることなく、議会の議論の結論だけを伝えられていたこと、
D 「この光ファイバー計画が上野原に進出しようと考えている企業に評価されて、上野原の工業団地は満員になった」こと
などで『私の論理と判断の鏡』は『納得』のサインを出しています。

  以下に『交通輸送=トランスポーテーション』という第2条件の完成に向けた私の考えの骨子を記します。

@ 上野原に大学が出来たときに作られた川沿いの県道を藤野に向かって川沿いに延長し、上野原郵便局(本局)の前を通る県道の下にトンネルを掘って国道20号に繋ぐ
JR上野原駅南口開発を『合併特例債による多額の資金と膨大な時間と折衝を必要とする土地買収ではなく、マンションの区分所有の考え方を取り入れて、資金と時間を節約しつつ、地権者・行政・市民の3方が1両ずつ得をする構想』(合併特例債の南口開発への支出は光ファイバー事業への支出より大きいと私は理解しています)を検討する

     この構想の具体的内容については次回に考えを記したいと考えます。TN


2007−08−05  谷口ウエノハラ研究室  谷口 文朗



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